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epi.2
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「王名君はずっとアメリカで過ごしていたんだが、訳あって今月から日本へ帰国してきたそうだ。お前ら、困ったことがあったら助けてあげてくれよ」
担任の声がけにニコッと微笑む蒼汰。
華奢な体の肌は雪のように白く、栗色のサラサラな髪に珍しいアーモンド色の瞳。長いまつ毛と紅い小さな口は、同じ男とは思えないほど美しく、儚い雰囲気を醸し出している。
「…か…かわいい」
「男じゃないみたいだな…やば」
「すげえいい匂いしそう…」
そんな蒼汰に周囲の生徒はまるで獲物を捕らえるかのように熱い視線を送っている。
久々に会った蒼汰は幼い頃よりも更に美しさを兼ね備えた姿に成長していた。
「そんじゃ、席はあいつの隣だから」
担任の浦田がビシッと俺の隣の窓際の席を指差してニヤッと笑う。アイツの笑顔は嫌な予感しかしない。
「柊!お前寝てばかりいないでこれからは王名君のことちゃんと見てやれよ、頼んだからな!よーし授業始めるぞ〜」
嫌な予感はいとも簡単に現実へとなった。
担任の合図と共にこちらへ近づき隣の席へ座る蒼汰。
そんな姿を追う周りの視線が時に羨ましそうに、時に妬ましそうに俺へと突き刺さる。
あっちは俺のこと気づいてるのか…?
まさか俺たちのこと…忘れてなんか……
ダルい体を支えるように頬杖をつきながら、チラリと横を見る。すると俺の視線に気付いたのか蒼汰と目が合った。
あ……なんか言ったほうがいいのか……?
久しぶり?
元気だったか?
いや、なんかちげぇ…
こういう時、なに言えば…
引き込まれそうになる程のキレイな瞳と目が合った瞬間、ふわりと蒼汰が笑いかけてきた。
「はじめまして。これからよろしくね、柊君」
それだけ言って蒼汰はすぐに視線を逸らし、手際よく授業の準備を始めだした。
え………
なに、その反応
「あのさ……お前」
「なに?」
もしかして……俺のこと、覚えてない…?
十年前、あの時…
そう聞いたらなんて返ってくるのか…
いや、そもそも覚えてないのならその方がいいんだったっけ……
だから
「いや、なんでもねぇ」
速まる鼓動を鎮めようといつも通り机に突っ伏す。
隣の綺麗な顔が不思議そうに首を傾げていることに気付きつつも俺は寝たふりをする。
ずっと会いたかった、ずっと求めていた初恋相手は、俺のことなどとっくに忘れてしまっていた。
そんなのよくある話だろ。
一人で必死になって追いかけていたのがクソほどバカみてぇ。
現実とは逆に速まる鼓動を、俺はただ抑え込むしかなかった。
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