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最低最悪クズ野郎なあいつ
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そうだよ。
お前は、むかしから、最低最悪だった。
物心ついた頃には、俺は、あいつと一緒にいた。
俺が産まれる前に、クソおやじが他の女に浮気、不倫し、それに母さんがブチキレて、親父と離婚して実家に帰ってきて、産んだのが俺だった。
盆栽園を経営している母さんの実家は、人手を欲していて、母さんの出戻りを喜んで受け入れた。
そうして、俺は母さんの姉の子供であるあいつと一緒に、一つ屋根の下で生活することになったのだ。
あいつは他の人間に対する気遣いとか、自分がどう思われているかなんて、まったく気にしない奴だった。
それは、今も変わらないけれど、小さいころは、それに、さらにサイコパスじみた他人に対する嫌がらせじみた絡み方をする奴だった。
学校で、クラスメイトをからかって遊ぶうざい奴の更に上、テレビでやるドッキリを、素人である他人にしかけて、それで、楽しむ頭の足りないやつ。
それがあいつだ。
まだ小さいとき、飯を食べていた俺は、奴に玩具を食わせられて、窒息しかけたらしい。
俺は幸い、その場にいた大人の手で救助されて、死なずにすんだ。
それが、俺が奴にはじめて受けた被害だ。
奴はそのあと、親に怒られたが、まったく懲りなかった。
人の良い母親は、きっとあいつは、俺におやつを食べさせているつもりだったのだろうと、言っていたが、あいつに限ってそれはありえない。
奴は、俺がおもちゃを喰う様を見て、楽しんでいたのだ。
俺がこんな確信をしているのは、そのあと、同じようなことが何度もあったからだ。
幼稚園にあがる前、市民プールに家族で行ったとき、奴は、水中から隠れて俺のことを水に引きずりこんで、俺を溺れさせた。
俺が苦しがり、焦る様が面白かったらしい。
大人の手によって救出され、水とゲロを吐き出す俺を見て、ケラケラ笑ってやがったお前の姿は、死ぬまで絶対忘れない。
幼稚園のときには、俺が園で世話をしていたチャボの卵をもらって帰ってきて、孵化させようとタオルでくるんで温めていたものを奪い取り、卵かけごはんにしやがった。
タオルで包んで持ってるだけじゃ、卵はかえられないで腐るだけなんだよバーカと言われ、俺は泣いてあいつに殴りかかったが、五歳年上のあいに当時のぷにぷに虚弱体の俺が叶うはずもなく、俺は奴にぼこぼこに殴られた。
小学校へ上がったとき、俺は、あいつにお年玉を何度も強奪された。
ゆるせない。ゆるせない。ゆるせない。地獄におちろと、俺はいつも思っていた。
そして、そんな俺の願いを叶えるようにして、いや、あいつの性癖ともいえるような人への絡み方による自業自得な結果があいつにおこった。
中学になって、あいつは同級生のクラスメイトの男子からいじめられるようになったのだ。
俺にするような嫌がらせのような行為に耐えきれなくなった小学生の同級生たちが、やり返しをはじめたのだ。
それで、自分の行いを反省するならまだしも、あいつは逆切れしたらしい。
それが、元同級生たちを怒らせた。
あいつは、クラス中から無視されるようになり、そして、教師の見ていないところで転ばされたり、体操服や教科書を隠されたりするようになった。
あいつは学校へ行かなくなり、部屋へ引きこもるようになった。
俺は、あいつの両親からあいつの世話を任され、話し相手になったり、ゲームで一緒に遊んだりと、あいつをきにかけるようになった。
俺のお年玉は強奪されることはなくなった。
あいつも、少しは人の痛みが分かるようになったらしい。
少しは反省して、今までしてきたことを相手に謝れば良いのに、無駄に高いプライドを持っているあいつはとうとう、誰にも謝ることなく、中学校に通うことなく、中学生生活を終えた。
俺はあいつの両親の両親から、あいつのことをくれぐれも頼むと言われるようになった。
高校にもまともに通わず、高校の不良と呼ばれるような人間とつるんで遊ぶようになったあいつの将来が既に心配だったのだろう。
しかし、祖父はあいつの両親と違い、楽天的で、
「まぁ、あいつなら将来なんとかなっちまうさ」
と言って、俺に好きな進路に進むようにと言った。
俺は、これは祖父が俺に気を使って言っているのだと思っていた。
でも、これは祖父の本心だった。
祖父は、あいつが小さい頃から育てていた(とはいっても水やりなどの世話は祖父に任せていた)盆栽を盆栽展にだしていて、その盆栽が賞をもらったのだ。
だが、だからといって、奴が真面目に盆栽園を手伝うかといえば、そんなことはなかった。
小遣いが切れれば祖父の手伝いをする程度で、あいつは毎日悪戯歩いていた。
だから、祖父の親ばかならぬ、じじ馬鹿な過大評価だと思っていたのだ。
高校を卒業し、祖父の友人の盆栽園で住み込みで仕事をさせてもらって、盆栽について修行をした。
そして、お墨付きをもらって、俺は家に戻ると、家の手伝いをした。
この園は、いずれ、俺に継がせるからあいつの面倒はくれぐれも頼むと、あいつの両親は俺に土下座をして頼まれ、俺も、一生あいつの面倒をみていくことを決めた。
俺は盆栽園の跡取りとして、盆栽園で盆栽の手入れや世話をし、経営に携わるようになった。
あいつはあいつの両親や俺が何度も真面目に働くように言ってもきかず、俺に小遣いをもらって遊び歩いていた。
そして、数年後、奴が現れた。
金髪で碧眼のドイツ人の奴は、祖父が昔盆栽展にだしたあいつの盆栽を見て、あいつにいつか会いたいと思うようになったのだという。
奴はあいつに頻繁に会いに来るようになった。
そして、あいつが気まぐれに手を入れた盆栽を購入していった。
あいつをよく外へ連れ出すようにもなった。
すると、あいつは真面目に盆栽の世話をするようになった。
俺や、あいつの両親が何度言っても真面目に働こうとしなかったくせに、
俺が何度言っても応えようとしなかったくせに。
俺に、『今までありがとう』と感謝の言葉を言ってくるようになって、そして、俺の期限を窺ってくるようにまでなった。
あいつの変わりようを見て、あいつの両親は、俺に冷めた態度を取るようになった。
あいつが立ち直ったら、あいつに盆栽園を継がせたいと思うようになったのだろう。
もともと人の気持ちが分からないあいつは、そんな両親のことに気づきもしなかった。
だから、もう、あいつに全部くれてやって、俺は生まれてからずっと、修行中以外のときを過ごしてきた家から出た。
母ももう亡くなっていたし、俺があの家にとどまる理由なんてなかったんだ。
そして、俺が昔世話になった修行先で生活させてもらっているところに、あいつはやって来た。
自分の両親から俺に対する態度や思っていたことを聞いて、俺に謝りにきたのだという。
奴と一緒に。
そうだよな。昔のお前なら、俺に謝ろうなんて、絶対に思わなかっただろうな。
でも、その行為は余計、俺を傷つけることだと思わなかったのか?
どうして、あのままでいてくれなかったんだ?
あそび歩いて、俺に小遣いをせびって、たまに一緒に仕事をして、旅行をする。
あのままの生活をずっと続けてくれなかったんだ?
なんで、最低で最悪なクズ野郎でいてくれなかったんだ?
お前は本当に、最低で最悪なクズ野郎だよ。
END
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