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My first girl friend・・・・6
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地下鉄の改札前で、ボクはミニスカートの膝が音を出して震えるほど緊張していた。
地元で「まゆ」でいるときは、いつもなるべく人目に入らないように、通りすがりの存在感で俯いていたけど、今日は違う。
さっきから友達を待って、もう20分以上(ボクが早くき過ぎただけだけど)改札に向かって立ち尽くしている。いよいよ到着時間になって、にわかにざわつく人の波に友達を見逃すまいと顔を上げた。
それはまるでドラマを見ているようだった。彼女が現れるとググッとカメラが寄って、周りが背景となってぼやけた。
かれんちゃん……。
どこにも誰にも視線を向けていない、カメラで切り取られたオフショットのようなかれんちゃん。
そのかれんちゃんが、ボクに気づいて、小さく右手を振った。
ボクも慌てて、両手をパタパタと振ってみせる。
「まゆちゃんお待たせー」
かれんちゃんはキラキラとボクに駆け寄ると、おろしたてのお洋服を見回した。
「可愛い〜」
いきなり褒められて嬉しい。
ボクは、えへっとかウフッッとかしか言えなくって、精一杯にこにこしてかれんちゃんがきてくれた嬉しさを伝えた。
昨日、待機所でかれんちゃんと一緒になったとき、かれんちゃんが横浜で遊んだことないって話になって、じゃあ、今度おいでよ、なんて言ったら、おやすみいつ?明日?あたしも!じゃあ、あした!って、かれんちゃんが決めちゃったのだった。
「わーい、まゆちゃんと初デート!初ヨコハマ〜!」
もちろんボクは断ったりするわけないんだけども、ええ?ボクが?いいんですか?フォロワー6万人のかれんちゃんと?二人で?
そりゃあ、緊張もするってもんです。
なにより、ボクはまだ地元で「まゆ」として誰かと会ったことないんだもの。
生まれ育った街は、ボクの現実世界で、ボクのリアル。
そこで「まゆ」が存在できるのかな。
中華街方面の出口への地下通路を二人並んで歩きながら、すれ違う人の視線にボクは俯きがちになる。
かれんちゃんの隣で男バレバレなんじゃないだろうか、ボク。もし、同級生に会っちゃったらどうしよう。
でも、地上に出て、優しい昼間の光に立ったとき、かれんちゃんがスッと腕を組んできて、それがすっごく自然で、軽やかで、明るくて。
ボクの頭上にあった重たい雲は消えてしまった。
かれんちゃんの女の子パワーすごい。
ボクまで、自分がなんの屈託もない生まれついての女の子だと思えてしまった。
「あれ中華街?」
ギラギラの朝陽門を見つけてかれんちゃんがぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「うん、そう。どうする?まず山下公園行ってみる?お天気いいし」
「あ、ドラマでよくみるとこ」
ボクたちは映えスポットフルコースを尽きないおしゃべりと共に歩いた。
氷川丸とかベイブリッジのベタな風景も、かれんちゃんは喜んでくれたし、中華街でランチして、山手をお散歩して、みなとみらいに出てお買い物して、ライトアップまでまたいっぱいおしゃべりして……。
「まゆちゃんいいなあ、こんなおしゃれな街が地元だなんてさあ」
大観覧車の中、キラキラの横浜の夜景を背景に自撮りしながらかれんちゃんが言った。
「あたしの地元には夜景なんてないんだよ。8時になったらコンビニも閉まっちゃう。真っ暗な町」
「でも、ボクも初めてだよ、夜景見たの。これも初めて乗ったもん」
「うっそ、そうなの?もったいなーい」
そう言ってボクの隣に座り直すと、コツンと頭を寄せてスマホを持った腕を伸ばした。
今日はこうやって二人でたくさん写真を撮った。
かれんちゃんは自撮りも上手いけど、かれんちゃんが撮ってくれるボクは今までにない奇跡のショットになるから不思議。
アプリのおかげだけとは言えない。
かれんちゃんのフィルター越しの世界にボクはいるんだ。
観覧車の下に、ネオンに輝く遊園地が広がっている。
歓声を上げてジェットコースターが駆け抜けていく。
「あーあ、帰りたくないなあ……」
そう呟いて、ボクの肩に小さな頭を乗っけたかれんちゃんの長いまつ毛の奥の大きな黒目に赤や青のイルミネーションが映ってる。
「……今日まゆちゃんち泊まっちゃダメ?」
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