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第2話 『束縛彼氏ですがなにか?』 01
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あの日、尋人はこう言った。
『実際かなり重いと思う。藍が他の奴とどんなやり取りしてんのか気になるし、ほんと、閉じ込めて監視しておきたいくらい。』
それは、それまでの尋人とは全く異なるもの。
しかし、確かなものだったと気づかされた。
「藍、誰とチャットしてんの?」
むっすりとした顔で後ろからのぞき込んできた尋人。
俺と尋人の家が近いこともあり、和解してからというもの大体どちらかの家で過ごしている。
だから、必然と俺の予定は全部伝えているのだけど……。
友達と遊びに行くと言えば、どこに誰と行くのかを聞かれ、細かく連絡を要求される。
スマホをいじっていれば誰とやりとりしてるのか聞かれる。
まぁ、別に疚しいことはないし、俺に興味をもっていてくれることは嬉しいのだけど、確かに尋人は重いことが証明された。
「千種くんだよ。」
「千種くん…仲良しだな。」
何か言いたげな表情。
しかしぐっと押しとどまった様子。
尋人はきっと、千種くんのことを信用していない。
だから俺が頻繁にやり取りしていることを良くは思っていない。
それでも連絡するなと言わないのは、尋人なりに束縛したい心にセーブをかけてくれているのだろう。
我慢してくれている。
でも、俺だって尋人のことが好きなのだから、尋人の不安は極力減らしてあげたいんだよなぁ。
尋人に我慢しないで、と言いたいもののこれ以上束縛が激しくなると困るのも正直なところ。
どうしたものかと悩んでいる俺に、千種くんから提案があった。
『彼氏さんも連れて、お会いしませんか?』
千種くんも彼氏を連れてきてくれると言う。
実際に自分の目で見れば、尋人も安心するのではないかとの意見だ。
確かに、俺がやり取りしている相手は彼氏もいて俺と同じネコなんだってわかれば尋人も少しくらい安心してくれるかもしれない。
それに、俺自身会ってみたいという気持ちもあるし……。
俺は早速、尋人に提案してみた。
「尋人、今度の日曜日空いてる?」
「日曜日?空いてるけど…デートする?」
「デートっていうか……千種くんたちと会ってみない?」
ドキドキしながらの提案。
「え?千種くんとその彼氏と?大丈夫なの?」
怪訝そうな表情の尋人。
確かに、実際に存在する人なのかもわからないネットでの出会い。
だけど、チャットした感じ千種くんとっても良い子だし、ひとりで行くんじゃなくて尋人となら会いに行ってもいいのかなと思ってしまう。
「ん…ちょっと怖いけど。きっと、俺達にもいい刺激になるんじゃないかなって。」
「…わかった。」
尋人も思うところがあるようで、渋々ではあるが頷いてくれた。
こうして、今度の日曜日、千種くんと初めての対面が決まった。
ーーーーーーー
ーーーーー
千種くんと約束した日曜日。
俺達は、カフェで待ち合わせをしていた。
どうしてもそわそわしてしまって、早めに来てしまったのは俺達。
「どんな子が来るかな?」
「ガチムチの二人組とかだったらどうする?」
緊張した俺を気遣ってか、冗談めかして応えてくれる。
くすくすと二人で笑っていれば、いくらか気持ちが和らぐ。
そんな会話を繰り返して数分。
カランコロンと、入店のベルを鳴らしてお店に入ってきた二人組の男。
爽やかイケメンと、おめめがくりくりとした小柄な子。
なんだろう。
距離感とか、雰囲気とか…できてる気がする。
と、言うことは……?
「あ、あの…アイトさんですか?」
「千種くん?」
やっぱり!
小柄な方の男の子が声をかけてきた。
俺の問いかけにコクコク頷いたことから、どうやらこの子が千種くんで間違いない様だ。
ガチムチどころか目の保養だわ。
「じゃぁ、改めて……。アイトこと登美乃藍です。こっちが、彼氏の上城尋人。よろしくね。」
「はい!藍さんに、尋人さん。よろしくお願いします。おれは、南凪(ななぎ)千種です。」
「俺は西島壮志(にしじまそうし)。よろしく。」
ぺこりと頭を下げる二人。
緊張が伝わる初々しい千種くんの様子に、隣に立つ西島さんが愛しそうな視線を送っている。
千種くんはといえば、きっと無意識に西島さんの服の裾を握っている。
可愛いなぁ。
とりあえず席について一息ついた俺達。
「でも、よかった。アイトさんがちゃんと存在してて。」
「それは思った。俺らもガチムチが来たらどうしようって言ってたよ。」
チャットで感じた印象通り、千種くんは元気で可愛らしくて西島さんも千種くんのこと大好きで相思相愛と言う感じだ。
尋人も、俺のチャット相手が言っていた通り彼氏持ちのネコだということが確認できて安心してるみたい。
「あ、西島さん。よかったら、俺らもLIME交換しませんか?藍達だけ情報交換とかずるいじゃないですか。」
「あはは。確かに!交換しよう。」
俺が千種くんに相談していたように、尋人にも相談相手ができてよかった。
千種くんも、ほっこりとした様子で二人を見守っていた。
その後も四人でなんだかんだと会話を楽しんだ。
尋人が千種くんに嫉妬したように、西島さんも俺に嫉妬していたらしい。
あれは大人げなかったとしょげていた西島さんだけど、尋人はその様子に驚いていた。
千種くんへの嫉妬は、尋人にとっては軽度のものという認識だったのだろう。
しゅんと眉を垂らして俺を見てきた。
そんな尋人を宥めるように頭を撫でてやると、「愛だねぇ」なんて西島さんに言われてしまった。
そうだった。
二人とも腐男子のカップルだったわ、ここ。
心なしか千種くんも目をキラキラさせてるし。
リアルBLだなんて思ってるんだろうなぁ。
君たちもだろ!と言ってやりたい。
「はぁー、楽しかった!やっぱり直接顔を合わせて話すと楽しい!」
「ふふ。そろそろ帰らなきゃね。よかったら今度ダブルデートでもしようよ。」
「それいいですね。ぜひ行きましょう。」
にこにこと笑顔で手を振って帰っていく二人を見送って、俺達も帰路についた。
帰り道。
いつもよりも無言が多い。
「藍……。」
「んー?」
重々しく呼ばれた名前。
「やっぱさ、俺重いよな。」
「…西島さんのこと気にしてんの?」
目を伏せ、明らかに落ち込んでいる様子。
あぁ、俺との関係に悩んで落ち込んでいる尋人が愛しい。
そう思う俺はイジワルなんだろうか。
「確かに、尋人って重い!前が嘘みたい!」
そう言い切った俺に、悲しそうな痛そうな顔をする尋人。
どんどん沈んでいくその顔を引き寄せて、そっとキスをした。
「でも、愛してくれてるって誇らしくもあるよ。」
「藍。」
「尋人、大好き。だから俺らは俺らなりに愛情表現を作っていこ?」
束縛が尋人の愛情表現ならば、それを完璧に拒絶なんてできない。
尋人を不安にさせないように、それでも束縛に言いなりにならないように。
俺達の距離間で、愛情表現で。
「愛してる。」
「俺もだよ。」
ずっと尋人を愛していたいって、尋人に愛されたいって思う。
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