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えっちな義弟くんのカラダ共有♡年上二人に溺愛されて夜も眠れません
脅す理由 1
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初秋。湿気を含んだ夏の空気は次第に乾きだし、窓から室内に射す西日も、それによってできる影の形も夏とは変わる。そんなある夕方の事。
「お兄ちゃん、お帰りなさい!」
一か月ぶりの兄の帰宅に、凛は喜びを隠せない。航は皿洗いの手を休めて、凛に軽く手を振る。そしてタオルで手を拭いて凛をぎゅっと抱きしめる。ふわりと漂う爽やかなフレグランス。今年のトレンドのレイヤードの服、マッシュスタイルをベースにかきあげられた前髪が外国の人みたいでおしゃれ。今日もお兄ちゃんはとってもかっこいい……。凛はうっとりしながら航の胸に頬を寄せる。
「ただいま。凛、元気にしてた?」
「うん……! お兄ちゃんも元気そうで良かった……でも、寂しかった」
「可愛い事を言うね……凛、好き」
「っ、俺も! お兄ちゃん、好き、大好き……!」
看護師をしている母親は深夜勤務で翌朝九時にしか帰ってこない。この家には二人きり……凛はドキドキしながら航の背に手を回した手に力を込める。
夕飯を二人で準備して食べて、ソファに座って映画を見て……お風呂に二人で入ってイチャイチャして……ベッドに一緒に入った。息をするように自然に服を脱がせてもらって、唇を重ねる。お互いの気持ちの良い所をこすりあわせて、何のためらいもなく身体を繋げる。ただただ甘くて、気持ちよくて、幸せな行為。
「あぁっ、おにいちゃんっ……いっぱい、だしてぇ……」
「凛、気持ちいい?」
「うんっ……おにいちゃん、だいすき……!」
それが昨日の夜。今日の放課後。凛は綾瀬のアパートに呼び出されていた。重い足取りで階段を上って、部屋のチャイムを鳴らす。インターフォンごしに返事をされたので、ため息をつきながらドアを開ける。
初めて脅されて行為をしてから一ヶ月。二、三日に一回は来るので見慣れてしまった部屋。無口で何を考えているのか分からない綾瀬。
凛は何の感動もないまま部屋にあがり、さっさと終わらせてほしいとばかりに手早く服を脱ぐ。もう、慣れてしまった。兄相手だと嬉しくて気持ちいい一連の行為が、まるで事務的な作業のように始まる。
しかし……ひとたび始まると、凛の意思とは関係なく身体は勝手に快楽を求めてしまう。お兄ちゃんが好き、その心に偽りはないのに綾瀬のものになりたがっている浅ましい身体。そんな事を凛は絶対に認めたくない。それなのに、四つん這いになっていやらしい声をあげながら腰を振るのが止められない。
「あ゛っあ゛っあ゛っ、いや、いやぁ!」
「……嫌っていうくせに、すごく締め付けてくる」
「ちがうっ、ちがうぅ……あんっ、そこぉ、もっと、ついて……!」
月に一回出張から帰ってきた兄とする、甘くて優しい恋人同士のエッチ。
二、三日に一回、綾瀬のアパートで行われる、獣みたいな愛のないセックス。
凛は頭がどうにかなりそうだった。好きなのはお兄ちゃんだけ。でも身体が欲しがっているのは綾瀬さん。どうすればいいか分からない。
離婚した実父は新しいパートナーと暮らしているから、めったに会えない。実母はどこにいるか分からない。義父はもうこの世にいない。義母は女手一つで実の息子である航、そして義理の息子である凛を育ててくれていて、今は夜勤のある仕事をしている。大変なのにこんな事言う訳にはいかない。お兄ちゃんには絶対言えない。友人にも大学の人にも、誰にも相談できない。
凛は考えすぎて食欲がなくなってきた。夜もよく眠れないし、頭が痛くなることも増えた。嘔吐下痢のような症状が出て、常に頭がぼうっとする。でも誰にもこんなことがばれてはいけないから……市販薬を飲んでその場をやり過ごす……そんな日々だった。
―――ある日、いつものように綾瀬に呼び出された。体調が良くない。しかし、断ったら行為の画像を兄に送信されてしまう。兄に知られたくない凛は、重い足をひきずって階段を上って綾瀬の部屋に入った。
手短に終わらせようと、いつものように服を脱ごうとした時、立ちくらみを起こしてしゃがんでしまう。身体に力が入らなかった。
「大丈夫!?」
「……へいき……」
意外にも綾瀬が心配するように駆けつけて凛の肩を抱く。普段だったら嫌なのに、体調不良もあって、もたれかかってしまう。平気と言ったが本当は身体が辛い。何だかとても眠い。
……お兄ちゃん、おれ、もう疲れた。もう嫌だよ。おにいちゃんとだけ、したいよ。
凛は遠く他県にいる兄の事を考えながら意識を手放した。このままずっと覚めない眠りについてしまいたい。そんな気分だった。
凛が目を覚ますと、綾瀬の部屋のベッドだった。温かな布団に寝かせられていて、頭には熱冷却用のシートが貼られている。枕もとには綾瀬がいて、今にも泣きそうな顔をしていた。まるで大切なものを壊された子どもみたいな顔だ。どうしてそんな顔をしているんだろう。
凛はぼうっとした頭でここに来た目的を思い出した。震える手で制服のシャツのボタンを外す。
「凛、ちゃん……?」
「やらないと……お兄ちゃんが……」
「……! もういい、もういいんだよ……俺が、悪かった……ごめん……」
綾瀬の目に涙のような光の影が溜まってきて、ぎゅ、と抱きしめられた。温かくて優しい、親が子どもにするような抱擁だった。なぜか凛はその腕をふりほどけない。
どうしてこの人は……弱みを握って、脅して、愛のない行為をしてくるくせに……どうして優しくするの?
凛は綾瀬と初めて会った時の事を思い出す。中学二年生と小学一年生。年の離れた兄の友人はすでに体が大きく威圧感があった。思わず兄の背中に隠れた凛に、どうしていいのか分からない様子で……ポケットから小さなお菓子を出す綾瀬。お菓子を受け取ると、ほっとしたように微笑む姿が何だか可愛いなと思ったのを覚えている……彼は、そんな不器用な優しさを持つ人だった。それは今でも変わっていないはずなのに、どうして?
「綾瀬さんは……動画で脅して無理矢理してくるような人じゃないよね……何でこんな事、するの?」
「…………」
何か事情があるようだった。綾瀬は涙をぽたぽたとこぼしながら、ぎゅっと唇を噛む。凛はいたたまれなくなって視線を外す。
ベッドのサイドテーブルに、色々な物が置いてある。水分や糖分を補給するためのスポーツドリンク。バナナ。おかゆのレトルトパウチ。手軽に栄養が取れるゼリー飲料。胃薬、解熱鎮痛剤、頭痛薬。ドラッグストアのレシートが一緒にあったから……おそらく凛を布団に寝かせてすぐに買いに行ったのだろう。
無口で何を考えているのか分からないのに……優しい。凛は、ただただ綾瀬という人の背景が気になった。だから言った。
「……今は話してくれなくてもいい。でも、今までされた事を考えると……俺には理由を聞く権利があると思う。三日に一回くらいの頻度でたまに来るから、いつか絶対教えて」
「え……?」
「体調が良くなるまでは性行為が全くできない……でも、お兄ちゃんに写真は送らないで。それでいい?」
綾瀬はぱっと顔をあげて、凛を見つめる。まるでいきなり肩を後ろから叩かれたような驚き方だった。涙をぽたぽたと流しながら、小さく頷く。凛はせっかくなのでサイドテーブルからスポーツドリンクのペットボトルを取って、一口飲んだ。
幼いころから体調を崩すとお世話になるその飲み物は、甘くて少ししょっぱい……涙みたいな味がした。
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