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4月6日①[結月]
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1時間目は自己紹介。
面白い自己紹介してくれる奴もいれば、なんて言ってるのか聞こえない奴もいる。
俺にとって1番面白くないのがこいつだ。
「七海涼太、7月7日、七夕生まれのA型です!体を動かすのが好きで、特にバスケが大好きです。アニメや漫画も結構好きなので、おすすめのがあれば、教えてくださーい!」
そう、涼太。
俺が小6の時、転校してきた直後、
あの時は忘れもしない。
教室の隅で絵を描いていた俺のところにやってきて、
「結月っていい名前だね!」
と、一言。
転校することになって、より一層自分の名前が嫌いになった俺に言ったのだ。
いい名前、と。
俺は、暑い時期に生まれたのに、涼太なんて名前つけられちゃってよー、と笑いながら。
それだけのことか、と思うかもしれない。
でも俺は心底、涼太が羨ましかった。
どんなことがあっても、自分の名前を恨むことはないんだろう?
どんなことがあっても、誰かを恨むことはないんだろう?
涼太の名前も、性格も、羨ましかった。
「深山くん、次だよ」
突然、後ろの席から肩を叩かれ、現実に引き戻される。
後ろの席の……誰かは分かんないけど、女子に礼を言い、教壇へ向かう。
「深山結月です。9月15日生まれのA型です。好きなものは特にないです。嫌いなものは……自分の名前です」
小さな声でそう告げた。
教壇から見て右の1番手前、要するに出席番号1番の浅野……日向?が、ぱっとこちらを向いた。
ずっと窓の外見てたのに、話聞こえてたのかよ。
とツッコミながらも、席に戻る。
担任の……名前は忘れたが、先生が
いい名前だと思うけどなぁ、と呟く。
ああ、やっぱり言うんじゃなかった。
結月は、結局、褒められてしまう名前なのか。
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