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4月6日②[日向]
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今日は始業式だから、需要のない集会と先生のくだらない話だけで終わった。
新学期早々、親友の葵は部活があるらしいから、1人で帰らないといけない。
下駄箱から靴を取り出しながら、少し寂しく思う。
ふと、耳につく声が聞こえてきた。
「ほら、あの子!」
「うわ、あれってリスカ?」
「なんでリスカなんて……」
「怖ぁ〜」
これだから、女子は嫌い。
聞こえてないと思ったのか、僕がそっちを振り向くと、女子たちは一斉に黙った。
「そのまま引っ込んでろ、クズ」
冷ややかな視線とともに言ってやった。
何アイツ、性格悪っ、とか言ってるが、残念ながら僕の心には届かない。
そんなひねくれて、冷えきった心に蓋をして、靴を履いた。
下駄箱に人が増えてくる前に帰ろう……。
「……から、結月はいい名前だと思うよ!」
「いや、もういいから、涼太」
聞き覚えのある声がして振り返る。
下駄箱にやってくる声の主は、やはり、自己紹介の時、僕が唯一興味を持った26番の深山結月だ。
隣にいるのは、20番の七海涼太、とか言う奴だ。
七海は、深山が本気で自分の名前を嫌ってることに気づいてないんだろう。
あの鈍感男。
「じゃ、俺、部活行くね。また明日!」
「おう、頑張れよー」
深山は肩の荷が降りた、というようにほっとした顔をした後、下駄箱から靴を取り出した。
僕は、その仕草をよく観察した後、ポン、と彼の背中を叩いて言った。
「……深山くん、一緒に帰らない?」
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