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4月6日②[結月]
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「……深山くん、一緒に帰らない?」
声をかけてきたのは、浅野日向だった。
よく見ると、結構女顔なんだな、と思った。
俺が、いいよ、と言い終わるのと同時に浅野が口を開いた。
「深山くんさ、自分の名前、嫌いなんだね?」
またその話題か。
「……そうだな」
俯いたまま、俺は答える。
口の中が酷く苦く感じる。
これだから、名前の話題は嫌なんだ、と思ったが、次に浅野の口から出た言葉は意外なものだった。
「それと、七海くんのこと、凄く好きで、凄く嫌いなんだね?」
「……は」
こてん、と首を傾げながら爆弾発言する浅野。
くりくりした目は、俺のことを見透かすように、真っ直ぐ俺を見据えている。
エスパーか?こいつは。
なんて言おう。
ここで肯定したら、浅野が、いやもしかしたら話を聞いた誰かが、涼太に言うかもしれない。「深山くんが七海くんのこと嫌いだって」「深山くんホモなのかもよ」と。それは避けたい。
でも、ここで否定したら、涼太のことを何とも思ってないように見えてしまう。それも避けたい。
浅野の言っていることは事実なのだ。
「あれ?違う?」
「……そう……かもな」
ようやく絞り出した答えがこれだった。
なんだか居た堪れない気分だ。
「へえ、じゃあ僕と一緒だね」
楽しそうな顔とは裏腹な、何も感じさせない淡々としたその声に、少し鳥肌がたった。
浅野も親友に特別な感情を抱いてるってことか……?
「最後に1つ、君の恋愛対象は男?」
「は!?何言ってんだよ」
「否定はしないんだね。一応大丈夫ってことかな」
大丈夫、って何が……。
「じゃあさ、良ければ僕と付き合わない?」
「……は?」
接続詞が接続詞の役割果たしてない。
それに、こいつは口を開けば爆弾発言しか出てこねーな……と思いながらしばらく硬直していた俺だった。
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