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4月6日③[日向]
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「ただいま」
静まり返った家の中に僕の声は虚しく吸い込まれていく。
廊下でエラーをおこしていた掃除ロボットを回収しながらリビングへ向かった。
うわ、このロボット、父さんの原稿吸ってる。
まあ、いっか。
僕の家族は、このロボットの他にあと2人。
看護師の母と、小説家の父。
母は、僕が家を出るより早く出て、夜の9時に帰ってくる。
父は漫画喫茶にいる気がする。
編集の人と会ってくるとかなんとか。
まあ、今日はいない方が良いっちゃ良いんだけど。
あの無駄に勘の鋭いオッサンはすぐ聞き耳立てるから。
自室に入って、鞄を棚に入れる。
ベッドに置いていた少しばかりヒビの入ったスマホを手に取り、文字を打つ。
『報告したいことがある』と。
すると、すぐに既読になり、電話がかかってくる。
『もしもーし。ひな、どうかした?』
彼はいつも通り、可愛らしく間伸びした挨拶をし、僕のことをひな、と呼ぶ。
電話の挨拶で、どうかした?と言うのは彼の癖だ。
「僕、深山くんと付き合うことにした」
少しの沈黙が続いた後、突然音が消えた。
ミュートにされたみたいだ。
多分、電話の向こうで叫んでると思う。
数秒して音が戻ってくる。
『……え、マジで?』
「マジで」
『あれ、本気だったんだぁ……』
「僕は目的のためなら手段を選ばないよ。それも、葵のためなら尚更」
『はは、怖いねぇ』
嬉しそうに茶化すのは瀬戸葵。
僕の幼稚園からの幼馴染であり、親友であり、何より僕の心の支えである。
葵の恋愛対象は男_所謂ゲイというやつ_で、最近は深山くんの親友、七海涼太が好きらしい。
僕には全然理解できないけど。
葵にとって、いつも七海の横にいる深山くんが邪魔。だから僕は、深山くんを七海から引き剥がすため、無理にでも僕と付き合わせる、という計画だった。
葵には事前に話していたが、葵は「協力助かる」なんて言っていた。
ふわふわした喋り方の割には、なかなか図々しくて薄情な男なのだ。
『でもさ、本当に良かったの?』
突然、葵の声のトーンが落ちる。
「何が」
『だって……ひな、俺以外はもう誰とも関わりたくないって言ってたのに』
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