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4月6日④[日向]
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「良いんだよ、僕はそれで」
どうせ、今だけの付き合いだ。
それに僕は葵が親友でいてくれるならそれでいい。
最後まで葵さえいてくれれば、それで。
『そう……でも、もしもの時は深山くんも頼りなよ?』
「まあ、不本意だけどそうする」
挨拶を交わして、電話を切った。
スマホを再びベッドに放る。
「もしもの時、か」
家族と葵と先生たち以外には言っていないが、僕は、心臓に腫瘍ができている。
それが判明したのはつい半年前。
学校から帰ってきて、家に入った途端、突然の眩暈と激しい動悸に襲われた。
その時はたまたま家にいた父さんが病院に連れていってくれて、そこで心臓に腫瘍があると分かった。
……ついでに、あまり長く生きられないことも。
それを聞いて、どんな時も強くたくましかった母さんは、泣いた。
いつもヘラヘラしていた父さんは、そんな母さんを慰めながら、冷静に医師の話を聞いていた。
僕は……何をしていたか、何を思っていたかも覚えていない。
ただ1つ覚えているのは、その日の夜、葵に電話をかけて、
「……僕、死ぬみたい」
と言ったことだけ。
その後、自分の病状、心情について泣きながら伝え、翌日、僕は葵と親に「葵以外とはもう誰とも関わりたくない」と宣言した。
僕と関わった人を、悲しませたくないから、絶望させたくないから、後悔させたくないから。
それと同時に、なるべく悔いのない人生を送りたい。
だから、せめて葵の願いを全て叶えよう、と決意し、今に至る。
でもやっぱり関係ない深山くんを巻き込んだのは悪かったかな。
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