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4月7日①[日向]
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ピピピピ、バコッ。
目覚まし時計をいつもより乱暴に殴って、起き上がる。
が、瞼は再び閉じようとする。
わかりやすすぎる睡眠不足だ。
目が開かない。
「日向?何をそんなしかめっ面してんだ?」
「3時間しか寝てない……」
自分が思っていたより呂律が回らないが、通りすがりの父さんが話しかけてくれたことで、頭は少しはっきりしてきた。
「3時間も寝たんなら大丈夫じゃねぇか?ほーら、起きろ〜」
と、言いながら僕をベッドから引きずり下ろそうとしてくる。
原稿〆切に追われて、また徹夜したんだな、父さん。
朝からダル絡みはやめてほしいところだが、目の下のクマが凄いことになっているのを見ると、ほんの少しだけ同情の余地はある。
「わかった、起きる」
「良し。……ところで日向、」
「何」
父さんは突然、ずいっ、と顔を近づけてきて、言う。
「恋人できたって本当か」
「は?」
寝ぼけ眼はパッチリと開いた。
何で知ってるの。
「葵くんから聞いてな」
おい、葵……。
「ま、なんかあったら父さんに言うんだぞ☆」
おじさんのウインクは痛々しい。
とりあえず父さんは無視して、母さんの作ってくれた朝ごはんを素早く食べて、制服に着替える。
しばらく空を見て、時計が7時半を指したところで、靴を履く。
「行ってきます」
「おう、恋人と仲良くな〜」
聞いてないフリをして、ドアを閉める。
階段を降りて、エントランスから外に出た瞬間、ゾワッと黒い気持ちが心の中に広がった。
ああ、だから学校へ行く間のこの時間が嫌いなんだ。
だめ、と体は言うが、心は止まらない。
深山くんと仲良く?
無理に決まってる。
だって、こんな僕なんか。
どうせ、あと数年で消える命だ。
できるものなら本当の恋はしたかった。
違う、僕が恋なんかできない。
全ては葵のためだ。
僕のためじゃない。
無意識に右腕に爪を食い込ませていた左手を離す。
落ち着け、違うだろ。
僕は、自分の幸せなんか願わない。
願ったところで、全て無駄だ。
深山くんは、今日から葵が七海くんと付き合うまでの、そのためだけの期間限定の恋人だ。
僕の恋人じゃない。
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