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バスに揺られて最寄り駅に到着すると、僕は花を買うために駅のデパートに向かった。
高校の最寄り駅周辺は、それなりに栄えており、買い物したり遊んだりするには十分である。
一方、父の亡くなった場所の最寄り駅は割と閑散としており、近くに花を買える場所がない。
そのため、電車に乗る前に花を買う事にしていた。
バス停から駅のデパートに向かう途中赤になったばかりの信号に引っかかり、ボーッと前を見ていた。
すると、横断歩道を挟んで真っ正面にある雑貨店に見覚えのある人物を見つけた。
(藤枝先輩……!?)
始めは見間違いかとも思ったが、僕の渡ろうとしている横断歩道はそう長くはなく、さらに僕は視力がいい方だ。
それに、僕はいつも食堂などで遠くからみる藤枝先輩の姿を目に焼き付けている。
どう見ても店の中にいるのは藤枝先輩だった。
(こんな偶然ってあるんだ…)
僕は感動に打ちひしがれながら、早く信号が変わらないかと焦れていた。
先輩はこちらには気づいておらず、何かを手にとってジッと眺めているようだった。
やっと青に変わった信号に少し早足で歩き始めた時、先輩の隣に誰かが来たのが見えた。
(副会長……?)
副会長がいるとは全く考えていなかった僕は、ビクッとなってとっさに歩みを止めた。
目が離せず立ち止まったまま二人を見ていると、副会長が先輩の手にしているものを見て何か言った。
それに対して、先輩は僕の大好きな優しい笑顔で微笑んだ。
その光景を見て、自分でも驚くほどショックを受けていると、車のクラクションがパァーと大きな音を立てた。
ハッと我に返って信号を見ると、すでに赤になっていた。
僕は180度方向転換して、目的地とは反対方向に走り出した。
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