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「……君って思った以上に積極的なんだね」
サロンから出て、このホテルの最上階にあるハイランクの部屋の扉を開けたと同時に。
アレクセイはそう少し疲れたような声音で言い放ちながらも、質問攻めした俺を紳士的にエスコートして中に入れてくるので。
「えっ……あっ……ごめん、ついつい知りたくなってさ。だってアンタ謎めいてるから……」
「謎めいてるね、うんそれは否定しないよ。でもそう言う君も謎めいてると思うけどね」
「バカ言え、そんな訳あるか……俺の何処がだよ。まあ、でも昔の記憶はないから。そう思われても仕方がないけどな」
俺はそう答えながらも、大人しく彼に案内されながら。
質の良いブラウンのカーペットが敷かれた部屋の奥に行き、今まで泊まってきた宿の中で一番広くて豪華な部屋に思わず。
「凄い、こんな高そうなのにデザインが良い部屋初めてだ」と彼に聞こえるか分からない声音で呟いてから。
田舎から来た者のように、備え付けの棚やソファー、クローゼットや洗面台、お風呂そしてベットを浮かれたテンションで。
「……これはめちゃくちゃ良いな、アールデコ様式で豪華な感じするけど派手すぎない」などと、楽し気に笑ってこの部屋を一通り見て回っていたら……。
「そんなに嬉しく成程、いい部屋だった……? 僕からしたらもっと良いランクの部屋が獲れたら良かったのになって内心思ってたから、君の喜びようで安心したよ」
アレクセイは浮かれてはしゃぎ始めた俺を、子供を見守る保護者のような目線で見つめながら、手触りの良さそうな質の良い素材で造られた黒色のソファーに座ってそう答えるように言うので。
「あぁっ……えっと……そりゃめちゃくちゃ良いよ。だってこんなに豪華な部屋来たの、もしかしたら生まれて初めてだし。というか、これ以上のランクをアンタは求めてたのかよっ……流石にそれは勘弁してくれよな。この部屋でも良すぎて心臓に悪いんだから!」
「心臓に悪いねかっ……あっ……!? そう言えばヴィクトル、足の痛みはどうなの? 君のはしゃぎようで、すっかり忘れてたんだけど。どんな感じなのかな」
「……へぇ、何だよ覚えてたのかよ。足の痛みか……俺痛いのには慣れ過ぎてるから、正直よくわかんないけど。歩くとちょっと痛いって感じだけどさ……。それよりも心臓がずっと変な感じでっ……」
俺は自身の心臓の上に手をゆっくりあてて、そう素っ気なく言葉を吐いてから。
近くにあった柔らかで真っ白なベットに腰掛けて。
──俺の事を心配してくれる初めての他人に、弱音を吐いても良いのだろうか?
それとも弱音を吐かずに、その優しさを突っぱねるべきなのだろうか?
いやでも……弱った俺をさらに虐めて、アイツらにみたいに酷い事してくるかもしれない。
もしそうだったら、こわっ……い? いや違う怖くないっ……むしろアレクセイになら酷い事されても良いと思える。
だってよくよく考えたら彼は、俺が辛くて痛い出来事があった時に思い浮かべる。
『銀髪の怪しいドSの美青年』に物凄く近かったから、今日起きた身体的な痛みは全部彼にされたんだと思えば。
足の痛みでさえも、甘く甘美なものに感じてきて……。
自分のマゾヒスト的な欲求に、情けなさを感じつつも。
痛い目にしか合わない人生でしか生きれない自分が、唯一救われる為にそうなった嗜虐的思考を少しずつ解放しながら。
「痛くて、苦しいっ……でも、これはいつもあるから大丈夫。我慢出来るから、アンタが心配する事はないからな」
そう強く言い放ちながら、精神的ストレスで不規則に脈を打つ心臓の痛みに耐えつつ。
毅然とした態度を見せて、俺は本当に大丈夫だよと言うように、にこりと笑って見せれば。
「……そう言われても、心配するよ。というかむしろ……治してやりたい。いや違う、治させろ! 僕はもう我慢ならないんだ!! 大切な君が、僕以外の誰かに痛めつけられてるのは……!!ああもう、耐えられない!! 早く君から汚い証を消したい……」
アレクセイは心の叫びを吐き出すような声音で、言葉を叩きつけるように言い放ってから。
ベットに腰掛ける俺を、勢いよく押し倒して……。
俺のブラウン色のコートを綺麗に脱がしながら、ネクタイと土埃などで少し汚れてしまったカッターシャツも外して行くので。
「なっ……やだっ……やめて、服脱がさないでっ……酷いからっ……見られたくない」と、俺は彼に素肌が見られる事に恐怖を感じながら、ふるふると首を横に振ってそう答えてから。
心の中で続けてこう叫んだ。
(お願いだから見ないで、アイツらにつけられた傷だらけの身体なんか!!)
(本当に見ないで……他人に触れられるのですら耐えられないから、医者にもかかれず。自力で知識なく治した、醜い傷跡が、胸にもお腹にも腕にもあるから……)
(綺麗なアンタにだけは見られたくない、醜い俺を見て……気持ち悪いと思われたくない)と、ここまで優しくしてくれてる人に否定されて拒絶される事に怯えて。
でもそんな俺の悪い想像は、見事打ち破かれたかのように。
アレクセイは落ち着いた声音で、優しくそして甘く囁くように。
「大丈夫……ヴィクトルは綺麗で、美しくて可愛いよ。だから気持ち悪いなんて思わないよ、傷だらけでも……君は醜くならないさ。でも、この傷は僕が全部跡形もなく消すよ。だって腹が立つんだ、君を傷つけて良いのは僕だけなのに……誰が一体君にこんな事を、したんだろうね? 早く見つけて始末しないと」
「何だよそれ……アンタほんと意味わかんない、つうか消すって、どうやって消すんだよ?」
「あははは、僕を誰だと思ってるの。どんな方法でも完璧に癒す事が出来る権能を存在した(生まれた)時から持ってる唯一の存在だよ。だから、こんなもの造作も無いさ」
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