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「朝陽くん、いらっしゃい」
「…こんにちわ」
ペコリと丁寧に頭を下げたその子は
俺に気づいたのか少し目を見開いた
「あ!そうそう!この人がこの前話した桐谷先生だよ!」
「初めまして、保健医の桐谷です」
「…初めまして…。蓮城朝陽です」
蓮城朝陽(レンジョウ アサヒ)と名乗った少年は
かなり大人しく物静かな少年だった
身長は俺と同じくらいで
かなり細く色白だ
人見知りなのか
あまり俺と目を合わせようとしない
「朝陽くん、緊張してるんだね?」
「…緊張?」
「かなり人見知りなんです、この子」
「そうなんですか…」
朝陽くんは一瞬俺に視線を向けたが
すぐそらし、本を探し始めた
「人と接する事が得意ではないんです、朝陽くん」
「…それでいつもここに?」
「はい…。クラスになかなか馴染めないみたいで…」
「…そうなんですか…」
朝陽くんを見ると
何やら熱心に本を見つめていた
「…あーやって本を見ている時だけ…表情が明るくなるんです」
「確かに…さっきよりは表情が明るいですね」
「…めったに笑わないのに…ここにいる時だけは、たまに笑ってくれるんです」
そう嬉しそうに言う相澤先生の顔には
笑顔が浮かんでいた
俺も…朝陽くんの笑顔…見たいな…
そう思ったのが先か
立ち上がったのが先か分からないけど
気づけば俺は
朝陽くんの隣に立っていた
「…本、好きなの?」
「……え?」
「いつもここにいるんでしょ?だから本が好きなのかなって」
「………好きですよ…本…」
俯きながら
朝陽くんはそう言った
「いいよね、本って…。図書室ってさ…何か落ち着かない?」
「……落ち着きます…」
「本に囲まれて…幸せだよね」
「…はい…」
「朝陽くんは、どうして本が好きなの?」
俺がそう聞くと
朝陽くんは今まで俯いていた顔を上げて
俺の目を真っ直ぐに見つめた
初めて朝陽くんと
目が合った瞬間だった…
そして朝陽くんは
少し微笑みながら…
「……本は裏切らないから…」
そう言った…
大事そうに本を胸に抱えながら…
本当に本が大好きなんだな…って
そう思った
「ねぇ、朝陽くん」
「…はい…」
「俺も…たまにここに来てもいいかな?」
「…え?」
「…俺もここに来て、朝陽くんともっと仲良くなりたいしもっと話したいから」
「…僕と…仲良く…?」
「うん!…ダメかな?」
「…こんな僕と…仲良くしてくれるんですか?」
「もちろん!俺、朝陽くんと仲良くなりたいもん!」
「…桐谷先生…」
俺の言葉に
驚いたような顔をした朝陽くん
そして朝陽くんは
嬉しそうに微笑みながら
「…ぜひ…来て下さい…。僕も…先生と仲良くなりたいです」
そう言ってくれた
俺は少しでも
君に近づけたかな?
「何か悩みがあるなら…いつでも言って?俺でよければ聞くから…。朝陽くんも、いつでも保健室においでね?」
「…はい…!」
また1人
新たに出会えた
この学校に来てから
たくさんの人に出会えた気がする
とても暖かくて
いい学校だな…
この学校でなら
これから先もずっと頑張れる
そんな気がした…
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