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恋なんてものじゃない。
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あれは虜という名の猛毒だった。
廊下ですれ違ったあの瞬間から、
ふとすると頭の中に、颯爽と歩く彼の姿が浮かんでいた。
小学生3年生だったあの時の自分は
それが恋だなんて疑いもせずに、彼に夢中だった。
頭1つ分大きかった彼の目線は
常にまっすぐ前を見据えていて。
彼の後ろには見えない期待が注がれ、
彼の前には希望しかないように思えた。
友人がヒーローの登場シーンを真似するように、
自分は彼とすれ違う度、彼の真似をして通り過ぎた。
当然それは、当たり前に、こっそりと。
真似ているなんてバレたくなくて、
でもどこかで自分に目を向けてくれないかと期待した。
それぐらいに身も心も彼に囚われていた。
すれ違うタイミングはいつも突然で、
いつしか廊下に出る度、緊張するようになっていった。
虜になった夏の日から、秋へと季節が移り変わる頃には、
彼が1つ上の男の先輩であることを知った。
冬になる頃には
青田 洸(こう)という名前であることを知っていた。
火曜日と木曜日以外は
校庭へ向かうことも、
手の甲にマジックでメモをする癖も。
そんな些細なことを見つける度、
彼がどんどんと魅力的に見えて、
いつしか見ているだけでは足りなくなっていった。
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