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覚悟の朝
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頬を撫でる優しい感触に目を開けると眼前には春斗の顔があった。
昨日はあれから何かをするでもなく抱き締め合って眠ったんだっけ、と寝起きの冴えない頭で思い出すと春斗の目がじっと俺を見ていることに気が付いた。
「やっと起きた。おはよ」
「お、はよ」
なんだか気恥ずかしく感じて布団で顔を隠す。
しかし春斗はそれを許さず布団を剥ぎ取ると、後頭部に手を添えて顔を寄せた。
思わず目を閉じるも想像していた感触はいつまでたっても訪れず、薄っすら目を開けると憎たらしく笑う春斗の顔が見えた。
からかわれたのだと気付いた瞬間、本当に火が出るんじゃないかと思うくらいに顔が熱くなる。
「ふ、ざけんなよ、今の絶対根に持ってやるからな!」
咄嗟に掴んだ枕を投げつけて部屋を後にする。
勢いに任せて階段を下りるとさっきの声が聞こえたのか母さんがリビングから顔を出していた。
「どうしたの朝から怒鳴って。喧嘩?」
「別に何でもない」
続けて顔が赤いことを心配されたけど大丈夫だと言って早々に会話を切り上げ洗面所へ逃げ込んだ。
改めて鏡で自分の顔を見てみると笑ってしまうほど真っ赤だった。
その鏡に姿を現した春斗を鏡越しに睨みつける。
春斗は申し訳なそうに苦笑を浮かべながら歩み寄ってきた。
「ごめん。嬉しくて、つい」
「許してよ、ね?」と俺の顔を覗き込んでくる春斗。
別に本気で怒っているわけじゃなかったから素直にそう伝えると、待ち侘びていた感触が今訪れた。
「ばっ、か……見られたらどうすんだよ」
思わず声を張り上げそうになって何とか踏みとどまる。
春斗は事の重大さを理解していないのか、ごめんごめんと軽く謝った。
「……このことがバレたら一緒にいられなくなるかもしれねーんだぞ。わかってんのか」
「わかってるよ」
一転、春斗は真剣な面持ちで俺に向き直った。
「そんなの、秋にぃを抱いた日からわかってる」
その真剣な眼差しに喉の奥が、ひゅっ、と締まる。
春斗の覚悟はどれくらいのものなのか、俺の覚悟は春斗と同じくらいのものなのか。
考える間もなく、リビングから「片付かないから早く食べて」と催促する母さんの声が聞こえて、慌てて顔を洗い流しリビングに戻った。
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