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迎えた金曜日。
豊は他部署の応援に呼ばれ、豊が戻る頃には俺が来客対応で慌てており、結局2人で話す時間は取れなかった。
しかし昨晩のうちに全ての準備は済ませてあるのでお互いに焦る必要もない。
19時に予約された個室居酒屋は外装もメニューも洒落込んでいて、βとの違いを見せつけられた気がした。連れと行く飯屋とは雲泥の差だ。
まっすぐ家に帰り、普段はシャワーで済ますが今日はしっかり湯に浸かった。
気を抜けば口角が上がる感覚は随分と久しぶりだ。
長年蓄積された恨み辛みが発散できるかもしれない。それがここまで俺を高揚させるだなんて。
身長はどうする事も出来ないが、骨格を隠せる緩めのトップスを引っ張り出した。
少しでもΩのような華奢なラインに近づけるように。
普段ならばまず確実に選ばないであろう甘ったるい香水を、やりすぎなくらい振り撒いたらほぼ完成だ。
全身鏡の前で一周し、いつもと明らかに雰囲気の違う自分への違和感を覚えながらも横の棚から未開封のショップバッグを取り出した。
ラッピングの有無を問われるくらいには王道なプレゼントとしても知られるアイテム。これを装着する事で自らを危険から守る代わりに、周りに対し自身がΩであることを知らせるというどこか矛盾したアクセサリーだ。
Ω用に作られているためか、大きめのサイズで丁度良い。
そういえば豊も、折れてしまいそうな細長い首だった。
「お前らの心、全部壊してやる」
豊と、顔も知らないαに対する宣戦布告は、鏡の中の俺自身がしっかりと聞き届けた。
──指定された店は大きな駅から歩いて5分もかからない歓楽街のど真ん中だ。
通りを真っ直ぐ抜ければ飲み屋とホテルが並んでいる、俺からしたら何とも素晴らしい立地。
豊はここまで見据えていたのか…?いや、そんな訳ないか。
なんだかんだ言ってあいつは彼氏を信じているみたいな口ぶりだった。
『今着いた。行ってくる〜』
かといって送信した5秒後にはちゃっかり既読がついているのだから、不安を拭い切れているわけでもないのか。どうでも良い事だが。
『カレ早く着いて、もう待ってるみたい!あとはヨロシク^^』
余裕こいたその顔文字みたいに笑っていられるのは今のうちだ。
了解と検索して出てきたスタンプを適当に送り、スマホを閉じた。
店のドアが開けば、きちんと髪を纏めた店員が予約席へと誘導する。
床まで届きそうな暖簾をくぐると、そこにはカジュアルなスーツが似合う亜麻色の髪の青年が座っていた。
「千鶴さん…ですか?初めまして」
「どうも。あなたが隼人さんですか」
薄い唇が開き、白い歯を覗かせる。鼻筋はすっと通っており、長い睫毛がよく目立つ色素薄めの瞳。
今まで出会ったαの中でも、この人レベルは居なかった。
誰もが惹きつけられる魅力を持つ彼が、豊の恋人。
つまり、俺の標的。
「豊からさっき連絡があって…少し遅れるみたいなので、先に2人で始めちゃいましょう」
「そうなんですか?…わかりました。では、のんびり待ちますか」
互いにパネルで酒と料理をいくつか注文したのを合図に、俺のミッションがスタートした。
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