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1.モーニングルーチン
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「今日の兎洞(うどう)くんは一限から授業、給料日前なのに新作のゲームソフトを買って金欠のためお昼は菓子パン、火曜なので四時からラストまでカフェのバイト、帰りに値引きされた弁当を買う……」
コルクボードに貼られた地図と写真と膨大なを眺め、待鳥跡矢(まつとり あとや)はターゲットの行動予測を頭に叩き込んだ。写真の被写体は全部同一人物、垂れ目と泣きぼくろが可愛い男。彼は兎洞咲仁(うどう さきひと)、待鳥と同じ大学に通う二回生だ。目線が撮影者を向いている写真は一枚としてない。
当然だ。隠し撮りなのだから。
コルクボード上の時計は五時を少し過ぎたところだ。イヤホンから聞こえてくるのは、兎洞の規則的な呼吸。まだ寝ている。ああ、夢の中にも盗聴器が仕掛けられればいいのに。彼が見ている夢を一緒に体験してみたい。
そんな妄想を繰り広げながら軽くストレッチをした後、待鳥は軽快に走り出した。
ストーカーの朝は早い。
ランニングがてら、兎洞の住むボロい学生アパートの周りをパトロールし、何か変わったことはないかチェックする。
ポストの中を検分し、入っていたものとロックの数字を元通りに戻す。
それが毎朝のルーチンだった。
遊びたい盛りの男子大学生にしては、兎洞の生活は真面目で、バイトと大学とアパートの往復。恋愛沙汰はなく、決して多くないバイト代を実家に送っている。
なんて健気なんだろう。
そんな慎ましい生活を送っているのに、盗聴器で聞いている分を含めて彼から不満や愚痴を聞いたことは一度もない。
満足して家に帰る途中で、待鳥はあるポイントに落ちているタバコの吸い殻を見つけた。
(……またタバコの吸い殻が落ちてる。銘柄も同じ。ここ一週間、毎日だ。偶然かもしれないけど、なんかの形みたいに見えるんだよな)
持参した携帯灰皿に入れて、きれいに片付ける。
ただのポイ捨ての可能性もあるが、偶然と言いきれない理由がある。吸い殻の場所に立つとちょうど兎洞の部屋のベランダが見えるのだ。なんだか薄ら寒いものを感じる。
(パトロールを強化した方がいいだろう。兎洞くんは僕の天使……絶対誰にも傷つけさせない)
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