アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4.自分があまりに醜くて
-
連絡先を交換し(もう知ってるけど)、バイト先を紹介され(もう知ってるけど)、バイト終わりに合流して帰る約束をとりつける。
バイト中は、兎洞の気が散らないように一旦家に戻るフリをした。その後は引き返して彼の働くカフェ向かいのビルのファミレスに陣取る。ここからなら、カフェ全体がよく見える上に、使っているガラスの関係で向こうからは見えないのだ。
(ああっギャルソン姿がかっこかわいすぎるよ兎洞くんっ。この一年で〇.六センチ背が伸びたからかエプロンがさらにびしっとキマってるなあ。特に赤ちゃん連れとおじいちゃんおばあちゃんに優しいのが素敵なんだよなあ……!! こんなの全人類が惚れちゃうよお!!)
ふと我に返る。暗くなったので窓ガラスに自分の姿が映っていたせいだ。双眼鏡をのぞきこんで鼻息荒く彼を観察する姿は不審者そのもの。こんな姿を見られたら一発で通報される。
客がはけて誰もいなくなったカフェの店内をまた見つめた。モップで床を掃除している兎洞の真剣な横顔を見ていると、その清らかさとあさましい自分とのギャップに、涙がこぼれてしまう。
(なんてきれいなんだ、君は)
「あのー、お客様、涙が……大丈夫ですか?」
ファミレスの女性店員が心配そうにハンカチを差し出してくれた。
「何か問題がありましたか?」
「すみません……自分があまりに醜くて……」
顔いっぱいに怪訝な表情を浮かべている店員にお礼を言って、待鳥は観察を再開した。
彼みたいにきれいなものにはなれない。だからこそできることがある。
ストーカーの意地にかけて、必ず彼を守ってみせる。決意を新たにし、待鳥は兎洞の電話を待った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 11