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しばらくして、順番が来た。
新井君は、一番前に乗っている。
俺はその隣に座った。
新井君は手を差し出してくれたので、俺はおずおずと手をつないだ。
そ、そんな子供みたいな扱い恥ずかしいよ。
「優音、怖いなら抱き着いてもいいよ?」
「だ、大丈夫だから!!」
新井君は意外と意地悪なところがあるみたい。
列車が動き出す。
なかなかに速いスピードで、とてつもなく怖い。
新井君の方を見て助けを求めようとしたが、新井君は前を見ていて気付
いてくれない。
じわっと涙があふれた。
「だいじょぶ?抱き着いてもいいんだよ?」
やっと気づいた新井君がにやりとした顔で言ってくる。
「ばか......」
俺は屈辱を少し感じながらも、新井君に身をゆだねた。
怖くて必死に新井君にしがみつく。
結局最後まで抱き着いたままだった。
「楽しかったね。優音もかわいかったし」
「新井君の意地悪……。分かっててやってるでしょ」
「ごめんごめん。優音の反応が可愛くてつい」
「もう知らない!」
俺は頬を膨らませる。
「優音は可愛いね」
またそういうこと言う……!俺は思わず顔を赤くする。
「優音、次どこ行きたい?」
「観覧車」
「了解!」
俺はふと疑問に思ったことを口に出す。
「新井君、どうして今日誘ってくれたの?」
「んー……。まぁいいじゃん」
「教えてくれないと帰らない」
俺は拗ねるふりをする。すると新井君は困ったように笑った。
「わかった。言うよ。優音のことが好きだからだよ」
直球に言われ、ドキッとしてしまう。
「誰とくるかが大事、って言ったろ?俺はお前が好きだからお前ときた
かっただけだ」
「そ、そっか」
曖昧な返事しかできなかった。
俺と新井君は、観覧車に乗っていた。
沈黙が続く中、先に口を開いたのは新井君だ。
「優音はさ、好きな人とか......」
「またその話?なんで何回もその話するの?」
「気持ちっていうのは些細なことで変わるんだよ。んで?好きな人はで
きた?」
「......」
すき、なのか。嫌いじゃない、なのか。
好きってなんだろう。
毎日のように新井君はぼくに好きって言ってくる。
いや、違うな。
これはすき、とは違う......よね?
「どうなんだ?」
「わからない」
「じゃあ、俺と付き合ってみようぜ」
「は!?」
「だって優音はまだ自分の気持ちが分からないんだろ?なら俺と試しに
付き合おう。それで俺のことが好きか分かるかもしれない」
「やだ」
考えるより先に言葉が出た。
そんな、お試しみたいなことは、新井君の気持ちをないがしろにしてる
みたいでいやだった。
「お試しは、いや」
「……分かった」
「でも、友達のままではいさせて」
「それはもちろん」
俺達はそこで会話をやめた。
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