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決意
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「いかないでっ......」
気付くと俺は新井君の服を引っ張っていた。
「えっ?」
新井君が驚いたように振り向く。
何故だか涙がこぼれてくる。
「ゆ、優音?」
「......帰らないで......」
やっと出てきた声は震えていた。
「優音、それってどういう意味?」
「わか、わかんな、い」
どうしてこんなにも泣きそうなほど、新井君を引き留めたかったのかな
んて、俺自身にもよくわかっていない。
ただ、このまま新井君が帰ってしまっては嫌だと、直感的に思った。
「優音、泣かないで」
新井君が困ったような表情を浮かべながら言う。
「泣いて、ない」
そう言いながらも頬を伝う雫は止まらなかった。
「じゃあさっきの言葉の意味、教えてよ」
新井君が真剣な眼差しで俺を見つめる。
俺は黙って首を横に振った。
言えるわけがない。だって俺も分からないから。
でも、まだ一緒にいて欲しかった。
それだけは確かな感情だった。
「俺のこと嫌いになった?」
俺は無言で首を横に振る。
「じゃあ好きになってくれた?」
「……」
俺が答えられずにいると、新井君は苦笑しながら口を開いた。
「まあいっか。今はそれでいいよ」
そう言って優しく微笑む。
なんだか、罪悪感がいっぱいだった。
こんなにも気持ちを伝えてくれているのに。
俺はなにも......何も応えられてないじゃないか。
こんなに.......こんなに......愛をもらっているのに。
俺は、掴んだ新井君の服から手をおろした。
そしてそのまま新井君に抱き着いた。
涙があふれる。
「ごめん......答えが出なくてっ......ずっと......好きって言ってく
れてるのにっ......」
「優音……。気にしないで。俺、待つからさ」
新井君は優しく抱きしめ返してくれた。
「ほんと、優しいよね」
俺は泣き笑いのような顔で呟く。
「優音だからだよ」
新井君は少し照れたように言った。
心臓がまた高鳴る。
答えを出さなきゃ。
時間がかかってでも。
「俺、ちゃんと考えてるから」
「わかってるよ。いつか......教えてね」
俺たちはそっと身体をはなした。
涙はもう消えていた。
「わかった」
俺はちゃんと新井君のことを考えようと、決意した。
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