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挨拶
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目的の場所である職員室まで、ただひたすらに歩き続け、ようやく辿り着くことができた。少し息を整えて、中に入る。
「し、失礼します。あの、2年の金本ですけど…」
僕がそう言うと、視界の端でひらひらと手を挙げている人がいた。あの人が、担任なのだろうか?取り敢えず、近くまで寄ってみる。
「あの…」
「おう、お前が金本か。…ふーん、以外と」
その人はそう言うとジロジロと不躾に此方を見ている。一体なんなんだ。自然と顔が歪んでしまう。
「ん、ああ!悪いな、俺が担任の柳瀬和葉(やなせかずは)だ。」
よろしく。
そう言って柳瀬先生は此方に手を差し出し、握手を求めてきた。僕はそっと握り返した。
「こちらこそ、よろしくお願いします。ところで、僕は何クラスになったんでしょうか?」
「金本はBクラスだな。うちのクラスは元気な奴が多いからなー、まぁ、ちっとばかし疲れるかもしれんが、楽しいクラスだと思うぞー。」
B、クラス。さっきの、彼と同じクラス…。
心なしか頬が熱いような気がする。キュッと唇を噛み締め、俯いていると、柳瀬先生が教室まで歩きながら話そうといい、前を歩き出した。
それにしても…と、手紙の事を思い出しながら、僕の前を歩いている柳瀬先生を見る。スーツは綺麗に整えられており、少しばかり派手な顔が綺麗に映えている。難点はといえば、その中に着ているシャツのボタンが開き過ぎているところだろうか。
「ん?どうかしたか?」
視線に気づいたのか、此方に振り向き首を傾げる柳瀬先生。知らず、ほぉ、とため息が漏れる。美形は何をしても得だな。
「いえ…、なんでもありません」
「そうか?ならいいんだが…。金本は、元は編入生だったんだよな?」
「あ、はい。1年の冬にこの学校に…。まあ、見事に体調が悪い日が多くて、ちゃんと教室に行ったのは片手で数えるほどですけどね」
…だから、友達という友達もできませんでした。
苦笑しながら、そういうと、柳瀬先生が立ち止まり、此方を見てきた。
「先生?どうし」
たんですか?
そう続くはずだった言葉は、呑み込まれた。
「わ、わ、ちょ、せんせっ、何するんですか!」
わしゃわしゃと突然頭を撫でられ、思考が停止する。やっと解放されたと思い、そのまま先生の顔を見ようと視線を戻すと、ググッと顔を下に抑えこまれ、様子を見ることができない。
「先生?一体…」
「あー、いいか金本。俺はな、教師だ。」
「え?あ、はい。知ってますけど…」
「おう。だけどな、職業とか、大人とか子供とか関係ないと思うんだよな」
「あ、あの何が言いたいのか分からないんですが…」
「ん⁈あ、あぁ、だからだな、その、」
先生はそこで息を止めると、深く深呼吸をして、僕をじっと見る。いつの間にか手は離れ、僕もボサボサした髪をそのままに、不恰好なまま、視線を合わせた。
「は、話し相手位にはなれるぞ、俺は!」
まぁ、別に必要ないならそれでいいんだが…。
先生はそう言うと、顔を背けた。
ーーー、なんだ。やっぱりいい人なんだなあ。
一瞬、頭の中に手書きの、綺麗な文字が彩られた手紙の存在が頭をよぎる。ポカポカと胸が暖かい感じがする。
「先生」
「なんだよ」
「先生、ありがとう」
自然と笑みが零れた。先生は、目を見開くと、我に返ったように、そそくさと歩き出した。それにしても早い。
「ちょ、先生っ、早い!」
「う、うるさい!いいから、早く教室に行くぞ!あと少しで着くんだから」
僕は、そんな先生の後ろを急いで追い、隣についた。先生の耳は、赤く染まっていた。
しばらく歩き、ある教室の前で先生は立ち止まった。
「ここが、2-B。俺が受け持つクラスで、お前が今日から学ぶ場所だ。いまから中の奴等に軽いSHLの後に説明して、その後に金本の名前を呼ぶから、そん時に入ってこい。分かったか?」
はい、と頷くと先生は教室の扉を開け、静かにしろお前等ー、と言いながら入っていった。
ギュッと、胸の辺りを掴む。
今日、ここから始まるんだ。新しい、学校生活がーーー。
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