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最善の策は
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エイムを銃から剥がすように、腕を引き去った。
死を覚悟し、生気を失ったエイムを揺り起こすように、側面の床を撃ち抜いた。
銃声に、部屋が揺らぐ。
傍で鳴らされた銃声に、片耳を押さえたエイムの瞳が、ゆるりと開き俺を睨め上げた。
「………なんで!」
なんで、矛先を逸らせた。
なんで、殺してくれない。
なんで、お前の手にすら掛けてもらえない。
「一緒、だから」
ぽつりと零す声に、エイムの顔が訝しげに歪んだ。
「君を助けるためには、俺がしくじるしかなくて、……あいつらが来る前に、俺を殺してもらおうとした」
エイムの横に転がっているナイフを足先で弾き飛ばす。
床を滑るナイフを見詰めながら、言葉を足した。
「君がナイフを引けなかったように、俺も君に向けた銃の引き金なんて引けないよ」
無理な願いだと哀しげな色を乗せ、困り顔の笑みを浮かべた。
硝煙の香りを放つ銃を腰に差し、未だに疑心塗れの瞳を向けてくるエイムの身体に、抱き縋る。
「誤算だったよ。好きになんて、なるつもりじゃなかった。……君の全部が、好き。その声も、その顔も、もちろん中身も……ぜんぶ。あれは………嘘、じゃない」
耳を押さえていたエイムの手が俺の身体に回された。
悔しそうに、…縋るように、俺のシャツが握られる。
「………俺も、好きだ。宇宙人だろうと、得体の知れないなにかでも、きっと惚れてた」
あのベッドの中での会話を繰り返してくるエイムに、信じてもらえたのだと感じた。
死を覚悟したままの諦めの滲むエイムの声に、俺は思案を巡らせる。
〝お前に任せる〞とは言われたが、連れて戻れば、久家野はいい顔をしないだろう。
久家野が嫌いな人間の〝番犬〞。
いつ裏切るかもわからないような不安分子を傍に置きたくはないだろう。
久家野を切り、エイムと一緒に消えるのが妥当か。
だが、その策では、久家野の動きもエイムの飼い主の情報も簡単には得られなくなる。
危険が迫ろうとも、反応が遅れてしまう。
ならば、せめてエイムに繋がる鎖を外せばいい。
この組織から逃げ果せれば、エイムは死なずに済む。
上手く死を偽装できさえすれば、エイムの身は守られる。
俺は久家野の元に残り、エイムを〝逃がす〞のが、最善の策……。
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