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一緒に、いきたい……
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「もぉ……。誓斗(ちかと)の手駒強すぎ」
兄である俺を呼び捨てにする唯愛は、不貞腐れた音で言葉を繋ぐ。
「原井でいいから譲ってよ」
「嫌だね」
原井で妥協してやるという唯愛のオネダリを、間髪いれずに拒絶した。
原井は、そんな安い人間じゃない。
電話の向こうで、むぅっと膨れているであろう唯愛は、ぐちぐちと不満を漏らす。
「金も情報も、…なんなら駒だって、わざわざ盗まなくたって、抱かしてくれたら、あげるって言ってんじゃん」
「もうお前に抱かれる気はねぇの」
昔、何度か絆された。
可愛い弟の頼みだと、何度か流されてやった。
そのうち男よりも女がいいと、当たり前に軌道修正されるだろう、と思っていた。
でも、そんな俺の浅はかな思惑は、ものの見事に外れ、今に至る。
「じゃあさ、金も情報も、〝番犬〞のコトも目ぇ瞑るから、1発ヤらして?」
1発で手打ちになるなら安いもんだろ? と、口角を上げる唯愛の顔が目に浮かぶ。
「〝番犬〞を殺ったら、もうお前と口きかねぇ」
ぐぅっと呻く唯愛の声が耳に届く。
「俺は、大好きな誓斗と一緒に生きていきたいだけなのに……」
しょぼんとわかりやすく悄気た音で紡がれた唯愛の言葉を一蹴する。
「お前の愛、異常なんだよ」
俺の返しに、唯愛のくすりと笑う音が響いてくる。
「満更でもないクセに」
「うるせぇよ。〝番犬〞は、うちのもんだからな。手ぇ回すなよ」
唯愛の返事を聞く前に、通話を切った。
碌でもない仕事をして、碌でもない愛に沈む。
どれもこれも間違った道。
間違った道の先には、崖しかないから。
突き進み堕ちてしまう前に、俺が通行止めにするしかないだろ?
手を繋いで、一緒に逝きたいと願っても、それは叶えてはいけない夢だから……。
【 E N D 】
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