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再び、今年の冬・パンケーキ
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大抵は、抱いてしまった後で、篠木目は木賊の頭を撫で、こんなおじさんに執着してくれるなと言う。木賊は、頑なに、もう博仁さんしか選べないと言う。
だが、別れは、来る時はあっさりと来るのだと、経験則で篠木目は知っている。だから、この時間を愛おしく思いながらも、木賊自身を愛さないように、出来るだけ紺を感じるようにしている。
これは自己防衛なのだ、と篠木目は思う。木賊の行ってしまった世界で、多分、どう生きていくのか、今は思いつかない。そんな篠木目の心を知ってか知らずか、博仁さんが生きている間の時間が全部欲しいなどと、木賊は、大胆なことを言う。
「俺が確実に早く死ぬ。お前、その後どうするんだ。」と訊いても、
「まだ考えたくありません」としか言わない。
木賊は頑固なところがある、と、篠木目は思う。だから、一年一年を、大事に生きていかなければならない。木賊が後悔しないように。出来ることは全てしてやりたい篠木目だった。
翌日、珍しく早起きした篠木目は、パンケーキを焼いていた。これが、木賊と自分の一部になる、唯一の共通点。これを食べている時が、生まれも育ちも、死ぬ時も異なる自分たちが、唯一家族でいられる時間。
そう思うと、自然と作ることに力が入る篠木目だった。
いつまでも、こんな日々が続きますように。
神頼みしない篠木目ではあったが、めずらしく、そんなことを祈った。
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