アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
優しい君
-
高橋と先程の公園に戻り一緒にベンチに座る。
コーヒーを俺の方へ少し突き出し乾杯を要求してくる、それに答えるようにココアを高橋のコーヒーにあてる。
「お疲れ」
「お疲れさま」
公園の中は暗くて光といったらベンチの横に一本街灯があるくらいで、俺たちは並んでベンチに座りお互いに沈黙のまま、それぞれの飲み物を少し飲んだ。
「ありがとな手伝ってくれて、すげぇ助かった」
不意に高橋がそう言った、先程もこの公園に一緒にいたはずなのにその時とは公園の印象が全然違う。とても静かだ。そのせいか高橋の声がとてもクリアに聞こえる。
「大丈夫、別にやることもなかったし」
最初は関わりたくなかったなんて言える訳がない。
少しの沈黙のあと、「最近家の方どうなの?親とは上手くやってんのか?」
ふいの高橋の言葉にビックっと反応してしまう。あれ、何で家のこと知ってんだ?
「お前の兄貴からもよく聞いててさ大変そうだな」
兄貴、、、、俺には兄貴はいない、とゆうことは拓馬君のことか。なるほど拓馬くんも俺と同じような悩みを持った子なのか。
どうしよう、、、さすがにここまで立ち入ってしまうのはまずいような気が、、、
「今日、抜け出してきたのか?」
本当の事を話すか決めかねていたとき、高橋の突然の言葉に狼狽する。
「え…」
「家、こんな時間に外出てるってことはそうなんだろ?お前の兄貴が門限以外の外出も禁止だって、前言ってた」
「う…うん」
こんなにも拓馬くんとリンクしてしまうとは、流れに任せてつい返事してしまった。
「なんかあったの?」高橋が拓馬である俺に聞く。
いいな拓馬君はこんなふうに聞いてくれる人がいるのか。
俺はこんな風に誰かに聞かれたことないかもな、拓馬君が少し羨ましかった。
聞いてくれるだろうか、高橋は俺の話を聞いてくれるだろうか…
いつも心の奥にしまい込んで、みないようにしていた靄が、だんたんと湧き上がってきている。
別に拓馬くんの仮面を付けた俺でもいい、むしろ俺じゃない俺の方が喋り安いかもしれない。
無性に高橋に、この溜め込んできた靄をぶつけたくなっている。
どうしよう、でも。
俺があぐねいていると、高橋が俺の頭に手を置いて髪をクシャっとしてきた。
その手は凄く優しくて大きくて何でも許してくれそうだ。
「父さんと母さんが喧嘩してて。いや、喧嘩は殆ど毎日してるんだけど…何か嫌になって。俺はちゃんと頑張ってるはずなのに。なんか、いつも俺の事言ってて…」
喋り出してしまった、こんな事を口に出して言ったことがなかったため心臓がバクバクしている、喉が乾く。何を言いたいのかいまいち自分でもわかってないが口が止まらない。
「やることなすこと全部がダメなんだ。でもあの人たち俺のことなんて、ちゃんと見てないのに…なんであんなこと言えんだよ…俺はあの人たちが言ってるような人間じゃない、本当のおれは。ちゃんと……」
目元が熱くなる、鼻の奥がジンジンする。
「ちゃんと……」
次の言葉を発する前に高橋が頭に置いていた手をグっと自分の方へ引き寄せた。俺は体を高橋に預ける形になった。
高橋はなんにも言わないが、高橋の手とか、表情とかが凄く優しくて。
ぼろっと涙がでた
「俺は、頑張ってる…ダメって言われたらちゃんと直したし、勉強も誰よりも頑張ってるつもりだし…理不尽な事言われたって口答えしなかった。俺の……何がいけないんだよ……母さんだって前は、もっと優しかったし、父さんだって……」
俺はボロボロ泣きながら今まで誰にも言えなかった不平、不満をぐちぐちつぶやいた。その間、高橋は黙っていて。
たまに頭に乗せてる手でポンポン頭を叩いたり撫でたり髪をクシャっとしたりしてくる。
小さい子供に戻ったみたいだ…まさか自分でもこんなになってしまうとは思っていなかった。
聞いている相手が高橋だからっていうのもあるかも知れない、だってこいつ凄く優しいんだもん。
「うぅ~~ぅっ~~~~」
しばらくの間、高橋の肩を借りてグズグズ泣いていたが高橋は全然嫌な顔もせず、途中で帰ることもせず、ずっと俺が泣き止むまで一緒にいてくれた。
こんなに泣いたのは初めてだ、あんなに笑ったのも初めてだ、高橋って凄い。たった数時間でこんなにいろんな俺を見つけてくれた。
俺だってこんな自分知らなかったのに……
だいぶ頭もスッキリして、高橋から体をはなす。高橋は名残惜しそうに俺の髪を額からなで上げてはなした。
「ご、、、、、、ごめん、、、、」
泣いてスッキリした頭には先程のことは余りにも恥ずかしすぎて、泣いて赤くなった顔がさらに赤くなる。
あぁ。穴があったら入りたい……
「気にすんなって」優しく言いながら高橋がなで上げた際に乱れた俺の前髪を直してくれる。
その行為がさらに恥ずかしくて、目元がまた熱くなる。
その時……チュッっと目元に高橋の唇が降ってきた………
!?
俺は目を見開き高橋を見るが、高橋は「さ~てとっ」とベンチから立ち上がり、グっと伸びをしだす。
え?!今、俺何かされたよな??
なんだったんだ、高橋は何もなさそうな感じだけど、俺の気にしすぎなのか?
口じゃないし、皆よくやることなのかな?
あれか、高橋は帰国子女なのか?
熱かった目元もいっきにさめる、むしろ別の意味で熱くなる。
ぐるぐる考えていると、「もうこんな時間だしそろそろ帰るか。」高橋がそう切り出した。
「え?あ……うん」
そうか…もうそんな時間か……
最後に爆弾落とされた気がする。
まだ顔赤いし…なんでだよ、これでもう終わりなのに……
もう、こうやって話すこともないのに。
「また家に遊びに行くから。」
そうか、高橋は俺を拓馬君だと思ってるからまた会えると思ってるんだ。
実際の拓馬君に会ったらびっくりするだろうな。
「うん……また」
胸がぎゅっとなる。
「健人、いや兄貴によろしく言っといてな!まぁ明日学校で合うけど」
健人?あぁいつも高橋とつるんでる奴か、てことは拓馬君はあいつの弟なのか……
「うん、わかた、伝えとく……」
胸がキリキリ傷んだが何とか笑って言えた。
公園からもう道が反対だったようで、そこでさよならする。
高橋も俺も何回か振り返ってそのたびに手を降った。
高橋の姿が見えなくなって俺は少し泣いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 35