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優しい君
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教師はいつものように、教室に入ってきて。
教壇に立って教室を見渡した後、いつも居ないはずの人物の姿を確認しあからさまな動揺をみせた。周りの生徒に何があったんだと言うように目線を送っているが生徒の方も肩をすくめるだけだ。
皆からの注目を集めている当の本人は、教室に来たからといって授業を受けにきたわけではないらしく、授業が始まるやいなや机に突っ伏して寝てしまった。
そして、そいつの斜め後ろの俺は、そいつの突拍子のない行動が、自分に関係しているんじゃないかと、肝を冷やしている。
高橋はやっぱりあの日こと怒ってるのかな。でも、もし怒ってるならもうすでに何か言われててもおかしくないよな。
話しかけられるどころか、最初に目が合ってから全然こっち見たりしないし。俺にようがあるってわけじゃないのかな。
なんなんだろう、全然わからない。
俺は、どうしたらいいんだろうか。何か言われる前に謝ってた方がいいのかな、でも謝った所であの日の言葉をなしにするわけにはいかないし。
そもそも高橋が怒ってるのかどうなのかもはっきりしてないし。
てか、全然こっち見たりもしないのって、俺が関わるなって言ったからなのかな。
あれかな、俺が関わるなって言ったから「こっちだって関わるつもりねーよ」的な感じで、意思表示的なあれか?
でも、わざわざそんなことするような奴じゃなかったと思うし…
「…だか…日高。おい日高」
自分を呼ぶ声がパッと聞こえる、そちらに顔を向けると先生が少し眉を潜めて俺を見ている。
何回か呼ばれていたのだろう、クラスメイトの何人かにも注目されている。
「あ…すみません」
「お前がぼーっとしてるのも珍しいな、いいから前に来てこの問題解いてみろ」
そう言われて席を立った瞬間、高橋がこちらを見た。そして目が合ったと思ったらすぐにそらされた。
な…なんなんだ
黒板の前に立ち答えを書いていくが、頭の中は高橋と目が合ったことでいっぱいになっている。
「はい、正解。まぁお前にはチョット易しかったか」
教師にそう言われるがあまり耳に入ってこない。
自分の席に戻るときに高橋の方を見てみるか凄く迷った、迷った末ちょっとだけ見てみることにした。
伏せた目を少しだけ上げて高橋をみる。正直目が合うんじゃないかと思った。
でも、高橋はこちらを見ていなくて、机に肘を付き廊下の方へ顔を向けていた。
あ、あれ。なんだろう、拍子抜けというかなんというか。
高橋が今教室にいるのはたまたまで、俺とは全く関係してないのかな、だとしたら俺一人で意味なくこんなに動揺していることになる。
高橋はもう俺とのことは清算したのだろうか。
ズキっと心が痛んでしまう。
なんなんだろう、自分の事もよくわからないし。高橋の事もよくわからない。
自分の席につき、訳の分からない虚しような切ないような感情を持て余しているうちに、高橋はまた机に付して寝てしまった。
授業終了のチャイムが鳴り、いつもなら皆すぐに騒ぎ始めるのだが、教室に放たれたライオンの存在に恐れてか、何処まで騒いだものやらと、控えめに話し始める。
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