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可愛い君
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「何?てなー。だから、コンパだよ。F高の女子と!結構レベル高いんだぜ?高橋来たら絶対女子達喜ぶからさ〜。こっち一人足りないんだよ、だからさ、な?」
と西川は俺を拝むように手を合わせる。
またか。西川はこりもせずによく俺にそういう話を持ってくる。
日高の顔を見そこなってしまったこともあり、苛立ちを隠すことなく口を開く。
「前も言ったと思うけど、今はそんな気分じゃねーの。他あたってくれ」
「えー。気分じゃないって前も言ってたじゃん。なんなのやっぱ彼女いんの?」
「だから、いないって前に言っただろ」
「えー。本当別け分かんねーあれか。好きなやつでもいんのか?」
「いねーよ」
更に何か言おうと西川が口を開こうとした時、丁度よく昼休み終了のチャイムが鳴った。ブーブーと不満げに西川は自分の席へ戻り。俺も西川の方へ向けていた体を正面へ戻す。
この時間を受け持つ教師は既に来ていて、チャイムと同時に授業は始まった。
俺が授業に耳を傾けるわけがなく、早々に机に伏す。
目一杯息を吸い込み、薄く長く吐き出す。
先程の二つの会話を思い出して考えてみる。
片や試験勉強、片やF高女子とのコンパ。
いったい何故こうも違っているのだろうか。自分の生きてきた道に後悔はないが、何だか改めて考えてしまう。
勉強するか、コンパ行くかだったら間違いなく俺はコンパに行くほうだ。
コンパは別に行ってもよかったんだが、西川にも言ったように最近は気分が乗らない。
彼女とかいま要らないし。
ちょっと前までは、まだ彼女欲しいなー。とか思ってたんだけどな。あれか、ミキとの別れがトラウマになってんのかな、あいつめっちゃ怖かったし。
脳内でそのようなことを思いつき、まさかな。と払いのける。
多分、今は日高のこと考えてたら結構楽しいから、暇じゃないんだろうな。ああいうタイプの奴と関わんのは初めてだし、それにあいつ釣れねーしな。
日高とも仲良くなりゃそのうち彼女も欲しくなるだろ。
もう何ヶ月も彼女がいないのに、なんとも思わない自分を少し不思議に思う。
お盛んな男子高校生がこんなんでいいのだろうか。
優を見てる分、余計に自分が枯れている気分になる。まぁあいつは、盛りすぎか。
そんな事を考えていると。そういえばと、ふとある疑問が脳裏をよぎる。
日高は、彼女とかいたことあんのかな……
あの感じじゃいなさそうだよなー。コンパとかも行ったことなさそうだし。
てことは童貞……童貞なのか。教科書が恋人ですって顔してるもんな。
あれじゃ仕方ねーよな。
考えていたら顔がニヤけそうになるが、流石に一人でニヤニヤしているのはどうかと思い、なんとかたえた。
授業は、教師が黒板に何やら意味のわからない事を書いていってるが。俺は授業そっちのけで思考を巡らせる。
いつか、日高と浮いた話とかするようになったりすんのかな。好きな奴が出来た。とか彼女が出来たとか。
あいつはどんな女を好きになるんだろうか。やっぱり自分と似たような真面目な女を好きになるんだろうか。仲の良さそうな秋原とも勉強の話ばっかしてるしな。
真面目か……例えばあんな奴か?と同じ教室の中にいる、いかにもな女子を見てみる。
うーん。ダメだな、何か違うな。何が違うのかは自分でもよくわからないが、あの女子と日高は合わないと思う。
じゃあ、あれか?いや、あれも無いな。
授業中、暇なのをいいことに、俺予想の日高ガールフレンドを独断と偏見を振りかざし、勝手に考えていく。あーでもないこーでもないと、何時間も費やした結果は散々なもので、結局日高に合いそうな女は見当たらなかった。
俺は、一体何をやっているんだかな。
日高にしてみれば迷惑もいいところだろう。
でもそのおかげで時間がたつのが早かった、次に日高からメールがきたら例の件を言うつもりだから、なにか考えてないと一日が一年の様に感じるところだっただろう。
もうそろそろ今日、一日の授業も終わる。きっと日高は家に帰る前か、帰ってから返事をくれるはずだ。
送る言葉はバッチリ考えた。後はメールを待つだけだ。
メールを送ったあとの日高の反応はちょっと怖い。
なんてったって、一回拒まれた身だからな。俺が調子乗って、また振り出しに戻るはめになったらもう立ち直れないかもしれない。
でも、一回拒まれたからこそ分かったことなんだが、日高はもしかしたら押しに弱いのかも知れない。
俺の臆測でしかないのだが。でも、もしそうならそこを突かない手はない。だがヘタすれば逆効果になることは間違いない。「面倒な奴だな」と思われてしまったらもう終わりだ。力になるどころの話じゃくなってくる。
それでも、悩んでいても先に進むことはできない。
きっと大丈夫だ。根拠はないが。
安全な道ばかり選んだところで、その道がうまくいく道とは限らないし、なんせ俺自身が、そうしたいのだからそうするしかない。
周りの生徒たちがガタガタと、席を立ちだす。休み時間とは違った、開放感で教室が満たされ、きっと30分しないうちに、この部屋の中は流行りのこない喫茶店のようになる。
BGMは部活動中の楽器の音や、運動部の張り上げられた強い声、といったところだろう。
さて、これから家に帰るまでに、何回のメールチェックですむのだろう、チラリと日高の方をみてみる。
目の端でとらえた姿は、もうすっかり帰りの準備が完了していて、後は席を立つだけといった感じだが、まだ立つ気配はなく、伏せられた目の視線の先にはケータイ画面がある。
よし見てる。
てことは、もう返事返ってくるな。
いつ鳴ってもおかしくないケータイに意識は集中して、何度も日高の方を振り向いてしまいそうになるがぐっとこらえる。
日高が席を立つと同時にメールがきた。
「そうだね。明日はさらに暑くなるらしい。じゃあ帰るなお疲れ。」
うん。まさに予想通りの内容だな。
俺がメールを確認しているうちに、日高はもう既に教室を出たようだ。
教室から日高がいなくなったことで、一気にこの空間がなんの意味の無い物になった。その感覚を心の何処かでかすかに感じる。
俺が今から返事を送るとして、次返ってくんのは何時ごろかな。
なんて思いながら、ケータイに日高へ送る文字を打ち込んでいった。
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