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優しい君
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自室に戻り、先程母の言っていたことを思い出してみる。
二泊三日で沖縄か、いいな。
ではなく。
父の予定が決まったや否や、一瞬で計画を立て始めるなんて、やはり俺の母は恐ろしい。
余程あの時のことを根に持っていたに違いない。
でも、今回の父の転勤が決まったことにより、母の膨らんだ鬱憤が破裂する前にしぼんでくれたようで助かった。
あの人はたまに癇癪を起こしたように騒ぎ出すから、怖いんだよな。
そんな事を考えながらも机につき勉強を開始する。
よし。順調だ、このペースでやっていけばいつもよりいい点数取れるかも。
一時はどうなることかと思ったが、やればできるじゃないか俺。
まぁ、そのために色々と犠牲にせざるものもあったが……
申し訳ない気持ちで、ケイタイが眠っている鞄のほうへ目線をやる。
今日は帰ってからまだメールを見ていない。高橋からの返事は100%の確率で返ってきているだろうなと思う。
見るべきか…
もう、今日の勉強の範囲も終わったし。見るべきだよな。
まだ時間もあるし、返事も返さないといけないし。
鞄の中からおとなしく眠っていたケイタイを引っ張り出す。
取り敢えず、おやすみって感じの返事を送っておけばいいだろう。
そう思いながら、高橋からのメールを確認し、俺は自分の考えの甘さを痛感した。
これは…まずいことになった。
俺は一度ケイタイを閉じ、このまま見なかったことにしようと考えたが、見てしまったものはどうしようも無く、頭の中で高橋からのメールの内容が踊り出す。
仕方なく、もう一度メールを見る。
そこには、いつもより明らかに文字数の多い文章が画面に映されていた。
「そっか、明日は更に暑くなるのか。でもこんな暑い中、日高はよく勉強頑張ってるよな。もうそろそろ期末なんだろ?お前がいい点とれるよう応援してっから。それで、期末が終わったらなんだけど、どっか遊びに行かないか?教室では全然話せないし、このままメールだけっていうのもアレだし。せっかく仲良くなったんだし、もうちょっと友達っぽい事をしてみてもいいと思うんだ。あと日高に見せたいものがあって、絶対お前驚くと思うんだよ。だから、勉強が落ちついてからでもいいから、一緒に行ってみないか?」
何故だ。
何なんだ高橋。今までは普通に代り映えのない返事をくれていたのに。何でいきなりこんなメール送ってくるんだよ。
とゆうか、「そろそろ期末なんだろ?」って、何でそんなに蚊帳の外なんだ。お前も試験あるだろ。俺の応援はいいから自分の勉強しろよ。
それに、「せっかく仲良くなったんだし」って今の俺たちの状況って仲良くなれてるっていうのか?形的には友達ってなってるけど、まだメールで日常会話しかしてないし、仲良しとはまだ程遠いだろ。あと、友達っぽいことって何なんだ。そうゆうのって自主的にするもんじゃないだろ。
駄目だ、混乱して変なとこばかりに目がいってしまう。
これはあれだよな、遊びに誘われてるんだよな?でも俺と高橋で遊ぶってなにして遊ぶんだよ。趣味合わなくないか?
俺なんかと遊びに行っても、高橋は面白くないだろう事は目に見えているのに、高橋の考えていることがよくわからない。
俺に見せたいものというのも気なる。
見せたいものって何なんだ。自慢のバイクとかか?それなら興味ないから、遠慮したい。
そうじゃないとしたら、高橋が俺に見せたいものって何だ?分からない。
本当、どうすればいいんだ。このままメールだけしてたらいいわけじゃなかったのか。
ただでさえ、友達と勉強会以外で遊んだことないのに(※勉強会は遊びとは言いません)高橋と遊びにいくなんて無理だ。
でも、どう断ったらよいものか。
こんな爆弾を抱えながら呑気に風呂入ってご飯食べてた数時間前の自分が憎い。
こんなことなら、早くメールを確認してしっかり対策を練る時間をつくりたかった。
そして、円満に事が運ぶような、なおかつ高橋がぐうの音も出ないような返事を考えたかった。
とりあえずは、今ある限られた時間で何とか乗り切るしかない。
俺は自分のトーク力を振り絞り、どうやってこの流れを回避していくかを考える。
そうだな……取り敢えずは断る前に、高橋が見せたがっているものの事について聞き出してるべきだよな。
断ってからでは絶対教えてもらえないだろうからな。
「俺に見せたいものってなに?」
よし、的確に要点だけをついた内容だ。
俺の返信に高橋はすぐに反応したようで、何分もかからずメールは返ってきた。
「それは秘密に決まってんだろ。日高は絶対喜ぶと思うから楽しみにとっとけよ。」
ちっ。ダメか。秘密ってなんでだよ。
でも、俺が喜ぶものなのか?あまりあてにはしない方がいいと思うが、更に気になってしまった。
気になるが高橋と遊ぶのは避けたい、でも高橋はメールでは教えてくれなさそうだし。
見るもんだけ見て帰る。というのは無理だろうか。
何とかその方向で話を進めてみれないかな。
「遊ぶって言ってもどこ行くんだ?」
「遊園地行こう。あそこ新しいアトラクションできたらしい。」
ほら、やっぱり合わない。俺は遊園地のアトラクションなんかに興味は無い。このまま上手くかわせばなんとかなるかも。
「折角なんだけど、遊園地はちょと苦手なんだよな。だから遊びに行くのは諦めて、その高橋の見せたいものってやつだけでいいんじゃないか?」
よし、我ながなかなかの返しだ。
これでなら高橋も納得するはず。悪いがそのアトラクションへは別の誰かと行ってくれ。
「じゃあ、動物園行こう。」
じゃあって何だよ。
「動物園もちょっと…」
「じゃあ山に釣り行こう。」
「ごめん、釣りも無理だ。魚が怖い」
「じゃあ水族館も?」
「無理だな」
「じゃあ映画」
何でそんなに俺にこだわるんだよ。
そんなに遊びたいなら、他の友達誘えばいいだろ。
あんまり断り続けるのも無理ありそうだし……
しかも、だんだん行く場所が俺好みの場所になっていっている。
映画か……映画だったら、あんまり話さなくていいから楽かもしれない。
それに、このまま続けてたらそのうち図書館、とか言い出しそうで怖い。
「わかった。映画だったら行けるかも。」
あぁ……送ってしまった。これで映画は確定だな…
落ち込んでいるうちに返事が来る。
「まじか!よし、じゃあ映画な。何か観たいのあるか?日にちとかは俺が合わせれると思うから日高が行ける日わかったら教えて。何か、すげー楽しみ。」
な…何でそんなに喜ぶんだ。
一緒に映画観に行くだけだろ?
そんなに喜ぶことかよ、むしろ男2人で映画ってどうなんだ?
OK出したの俺だけど、なんか違う気がする。
映画とかなんかデートとかのイメージ強いし……そこまで考えて、やっぱり釣りにすればよかった。と思いなおす。
ああ……なんだろ何か急に映画行くの恥ずかしくなってきた。
でも、高橋凄く喜んでるしな……
もう一度高橋からのメールを読み直す。
すげー楽しみ……か。
映画って今なに上映してるんだろ。
高橋ってどんなジャンルが好きなのかな。俺はホラー以外だったら大丈夫なんだけど。
後から映画サイト調べてみようかな。
「上映してる映画いろいろ探してみる。日にちは、まだわからないから連絡する。高橋も映画探しといて。今日はもう寝ます。おやすみ。映画楽しみだな。」
高橋への返事をそこまで打ち込み、送信ボタンを押すのをためらう。
最後の言葉はやっぱりのけとこうかな。
何か恥ずかしいし。
そう思い、おやすみ。までの文章を高橋に送信した。
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