アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
可愛い君
-
―高橋斗真―
「おい、優ちゃんと話し聞いてんのか?」
「ごめん、あんま興味なかったから聞いてなかった」
真昼間の屋上、さすがに太陽の光を直にあびる事は避け、影ができている場所へ避難し、俺と優の二人は壁にもたれ座っていた。
健人は用事があるからといってさっき出ていったばかりだ。
「だから、日高と映画行くのがもうすぐなんだよ!」
「あーそうだね。で?」
「で?ってな~」
俺が必死になって、話しているというのに、聞き手である優の反応は冷め切っていて、色々と聞いて欲しいことはあるはずなのに、何を話したらいいやらわからなくなる。
「だって、斗真最近そればっかなんだもんね。最初のほうは、まさか本当にデートの約束しちゃうなんて思わなかったから興味あったけど、さすがにもう飽きちゃった」
「デートって……だからそんなんじゃねーよ」
もごもごと、そう口にする俺に
「あーはいはい、交友を深めるだけなんだったね」
と、そう言いながら優は、何か鬱陶しいものを払いのけるように手の平をシッシッとふる。
「なぁ、だからどうしたらいいか聞いてんだろ」
「だからもう、飽きたって言ってんでしょ」
「友達がいのないやつだな」
俺のその言葉を聞き、優は「はー」と目一杯のため息をつく。
「だーかーらー。もう、聞いてあげたじゃんか。土曜日に明希ちゃんと変な映画見るんでしょ?いいじゃん、普通に行ってくれば。逆に何でそんなに焦ってるのかがわからない」
優に言われたことで、自分でも気になるところがあり、少し考えるため黙り込む。
何故、一緒に映画に行ったりするだけの事で、ここまで不安になったり、焦ったりしなきゃならないのか。
そんなの…
「そんなの、俺にだってわかんねーよ」
「はぁ?」
優のこの「はぁ?」は完全に呆れかえったものだ。
「だから、お前に話し聞いてもらってんだろ」
「そのことについては、いくら俺が話を聞いたとしても解決はしないと思うけど」
「誰かに話さずにはいられないっていう、俺の気持ちがわからないのか」
「なに、その気持ち。わかりたくない」
「たのむ〜」
「嫌だ」
何度かこのやりとりを繰り返したところで、優がそういえば、と何かを思い出したように、制服のポケットからある物を取り出す。
「コレ、今日クラスの女子がくれたんだよね」
そう言いながら、俺に渡してきた物は、ネコの小さなぬいぐるみのキーホルダーだった。
「なんだこれ」
「さぁ。でも、その女子がそれくれる時に映画の話ししてたから、斗真の観にいく映画のキャラクターなんじゃないかと思って。あげるよそれ」
「いや、別に俺もいらない」
「まぁまぁ、遠慮しないで。その子を俺だと思って、話でも何でも聞いてもらいなよ」
「お前、俺のことバカにしてんだろ」
俺はそう言いながら、優を睨めつける。
俺の睨みに、優は少し押し黙ったかと思うと、すぐに口を開いた。
「まさか。実はこれね、運気アップの効果があるみたいで、このネコちゃんは友情運が上がるやつらしいよ?しかも、願い事をとなえると効果も上がるって!でも…斗真、占いとかおまじないって女子みたいで嫌でしょ?」
「まぁ、嫌いだけど」
「でしょ?だから、黙ってようと思ったんだ…だけど、俺は少しの可能性でも信じたくて。どうしても、斗真におまじないして欲しかったんだ……」
優は落ち込んだ声でそう言い、俺のことをチラリと見る。
「優…」
「ごめんね、斗真。でも、俺は斗真と明希ちゃんの仲が早く縮まればいいなって、本気で思ってるから。バカにしたような感じになっちゃって本当にごめんね」
「いや…俺こそごめん。このネコにそんな力があったなんて。ありがとな」
言いながら、手の中にあるネコを見つめ、その後、優へ視線をやる。
優の顔は、先程の暗さなど何処へやら、キラキラと輝きに満ちていた。
「いいんだよ斗真!ソレに願い事をとなえるなんて恥ずかしいかもしれないけど、そのネコちゃんを俺だと思って楽に話しかければ、多少羞恥もやわらぐと思うんだ」
「なるほど……」
「ね⁉︎」
優は、さぁさぁとはやし立てるように俺を見る。
正直、こんなのに話しかけるなんて、嫌だ。
でも、優の好意を無駄にするなんて、こともしたくない。
俺は意を決して、ネコを見つめ口を開いた。
「な……なぁ。日高と遊びに行くんだけど、上手くいくと思うか?」
当然ながらネコからの反応はない。
無垢な瞳がこちらを見ているだけだ。
ダメだ、やっぱりこれは恥ずいっていうかキモい。
「なぁ、優。やっぱ…」
「斗真!その調子だよ!そのまま続けて!」
「えっ……あ、あぁ。わかった」
優に言われるまま、話し続ける。
「それに、日高のメールってちょっと素っ気ない返事が多くて、やっぱ面倒臭い奴って思われてんじゃねーかなーと思うんだよな……」
「いい感じだね。絶対、明希ちゃんとの友情が深まるとこ間違いなしだよ!」
「そうか?」
「そうだよ!さぁ、話しかければかける分だけ効果は上がるから、頑張って‼︎」
「お、おう!」
そうして、俺はネコに話し続けた。
途中で健人が帰ってくるとこも気づかずに…
「でも、最近メールの返事も返ってくるし、俺と日高の友情は着々と深まってると思うんだよ。映画の予定決める時なんか、もう本当。友達って感じでさ。これで遊びにいけば、更に俺らの仲は深まるだろ?だから、絶対へましたくないんだよな」
「おい、優。あいつに何やらせてんだよ」
「いや…だって、話し聞けってしつこかったから、つい……」
「お前なぁ……」
「反省はしてる」
「本当、馬鹿だなお前ら……おい!斗真!」
ネコに夢中で話しかけていると、横から健人の声に呼ばれる。
いつの間に帰ってきたんだ。
見られたよな?俺がネコに話しかけてるとこ…
見られたよな⁇
「け…健人、帰ったんだな。えっとコレは違うんだ、ちょっとおまじないをしてただけで…」
「はいはい。わかってっから、そんなことより、期末の結果出てたぞ」
一応、俺としては生きてきた中でBest5の中に入る程、恥ずかしいことだったのだが、健人に軽く流されたことで、行き場のない恥ずかしさが虚しさに変わる。
「結果なんて、出る前からわかってるから、いちいち教えてくれなくていいよ、どうせまた最下位でしょ」
優も、俺をおいて健人の話題にのっかる。
「わかってんなら何とかしろよ」
「嫌だよ、勉強なんてできない。それで、健人は今回も、セーフだったの?」
「あぁ、余裕だったな。あと、あいつ総合一位とってたぞ」
健人は、沈んでいる俺にそうはなしかける。
「あいつって明希ちゃんのこと?」
「日高、一位だったのか?」
俺と優が同時に口を開く。
「そうそう、まあ珍しいことじゃないんだけどな」
「まじか〜!やっぱあんだけ勉強してたもんな〜、すげぇな日高」
先程の虚しさは一気に消え去り、日高に、おめでとうとメールを送ろうとケイタイを開く。
「あぁ、あと……」
「?」
健人言葉に、メールに意識がいっている俺ではなく、優が反応する。
「いや、やっぱいいわ」
「えー何だよ気になるじゃんか」
「なんか、面倒臭そうだし。あいつ」
「あー斗真?面倒臭いね」
[期末の順位表でたんだってな?日高今回も、よかったらしいじゃん。おめでと。]
日高に、メールを送りケイタイを閉じる。
「で?何か言ったか?健人」
「なんでもねぇよ」
「何だよ気になるじゃねーかよ。なぁ優」
優に同意をもとめようと、話をふるが、優は明らかに俺から眼をそらし
「いや、俺はあんまり気にならない」
と言った。
「なんだよそれー」
健人の話も気になったが。それより日高がちゃんと勉強できてたみたいで、よかった。
映画のこと決めたりするので、よく連絡くれてたから。じゃましてたんじゃないかと心配だったのだ。
試験ももう完璧に終わったし、これで気兼ねなく遊びに行けるってもんだな。
あーやべぇ。なんかめっちゃ楽しみだ。
だって教室の時みたいにコソコソしなくていいんだもんな。
返事も、メールじゃないからすぐ返ってくるし!!
そう考えたら、早く会いたくてたまらなくなる。
「なぁ、俺なに着てけばいいと思う?」
そう言いながら優と健人、2人を見渡すと。
「「知るか」」
と2人同時に応えられた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 35