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可愛い君
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日高との約束の日が近づきつつ、毎日のように優と健人に軽くあしらわれ、あれやこれやとしているうちに、当日がきた。
「あーどうすっかな〜」
俺は、何着か気に入っている服を目の前に並べて考え込む。
昨日の夜に一応着ていく服は決めていたのだが、いざとなるとなんだかキメすぎなような気がして、もう一度考え直すはめになった。
だって、相手は日高だ。
あんまり、俺が派手だとあいつも居心地が悪いだろう。
まぁ、頭が金髪な時点でもうアウトな気がしないでもないが。
でも、極力ラフな感じで行こう。
俺は、最近袖を通してない服なども引っ張り出し。その中から、地味なプリントが入った白いTシャツと、パンツは履き慣れたチノパンを選んだ。
こんな感じでいいか?なんか、ラフ過ぎるような気もするけど仕方ないよな。
考え出すと気になる点がまだまだ、ボロボロと溢れてくるのできりがない。
服装なんて今まで自分の好きな服を着れればそれでいいと思っていて、周りにどう評価されようが、それが良い印象でも悪い印象でも気にすることはなかった。
でも、日高は違う。
もし日高に、そんな服装の奴と一緒に歩くなんて無理だ。なんて言われたらショックで立ち直れない。
実際にその場面を想像してしまい、ありえそうで怖いな。と冷や汗が出る。
でも、もう他に何着たらいいかわかんねぇ。
こんな恰好の奴なんか探せば何人かいそうだし、普通の服装だよな?
変じゃないよな?
俺はもう一度、手持ちの洋服を眺め、これ以上の悪あがきは無駄だと判断した。
きっと、考え直したところで同じようなスタイルになるか悪化するだけだろう。
よし、もうこれでいい。迷うのはやめだ。
心にそう言い聞かせた。
ひと段落付いたところで、時間を確認するためケイタイを見る。
デジタル表示で表された時間は、12:30となっていた。
日高との待ち合わせは14時。映画上映の1時間前だ。
俺は、もうちょっと早めに会ってお昼でも一緒に、と思っていたのだが、それは日高に断られた。
待ち合わせには少し早いが、もう家を出ることにした。
しかし、家から出る前に、色々と細かいところを気にしてしまい、結局完璧に準備ができたのは13:00になってしまった。
靴を履き、家の中は皆出払っているため無言のまま玄関の扉を開ける。
外に出ると、光の眩しさに目が細くなる。
今日はいい天気だ。
空から太陽の光が容赦無く降りそそぎ、アスファルトはジリジリと音がしそうなくらい照り返っている。
これは映画で正解だったな。こんな日差しの中、日高を外に連れ回したらぶっ倒れそうだ。
そんなことを考え、つい笑ってしまいそうになるのを堪えながら、家の鍵をかける。
街へ向かう足取りは軽いく、鼻歌なんかも気を許すと出てしまいそうになる。
めちゃくちゃ浮かれてんな、俺。
でも、やっと日高と話せる。
メールだけのやりとりを始めてから、この日まで、俺にとっては長い日々だった。
日高からの返信を待つ、暇な時間がそう思わさせてるのかもしれない。
日高に会えるまであと、1時間も無いくらいだ。
30分前には待ち合わせの場所に着きそうなので、その30分もきっと長く感じるのだろうな、と考えた。
予定通り30分前には着き、周りを見渡すがやはり日高の姿はまだ無かった。
待ち合わせ場所は、駅前の広場で、木で影ができているところに座って待った。
待っている間に3分おきくらいで時間を確認する。
時間の経つ流れがとてつもなく遅い。
10分たっても日高はまだ現れない。
それから10分経過してもまだ来ない。
でも、約束の14時10分前なので、いつ来てもおかしくないだろう。
時計をこまめに確認しつつ周りを見る。
14時ちょうどになってもまだ、日高は現れない。
遅刻か?でも、連絡ないし。まさか、忘れてんのか?
そう思い、連絡を入れようとケイタイをいじりだした時に、少し離れたところから「高橋」と声が聞こえてきた。
その声が日高の声だと、コンマ何秒かで察知した俺は、すぐにケイタイから顔を上げて日高の姿を見る。
制服?
日高を見て、まず思ったことがそれだった。
まさか、日高。制服できたのか?まじで?
「ごめん、高橋待ったよな?」
日高は俺の前まで来てそう言った。
近くに来た日高の服装をもう一度確認する。
半袖の白シャツを黒いズボンにインしている。
どうやら、制服に似ているがよく見ると、所々違う部分があるようで、これが日高の私服らしい。
何だ、私服か良かった。いや、別に俺は日高が何を着ていようがいいのだが……でも少しホッとした。
「い、いや。そんなに待ってない」
頭は他にいっていたが何とかこたえ、意識を日高に戻す。
「そうか、なら良かった」
日高がそう言いながら俺を見て、俺と日高の目が合う。
服装がどうであれ、目の前に日高がいる。
そのことが嬉しくて、微笑むと日高の目がすぐにそらされた。
「も、もうチケット買いに行ったほうがいいよな?」
日高は目をそらしたままそうつぶやき、俺が動き出すのを待った。
「あーそうだな?」
日高の反応が気になったが、俺は立ち上がり、日高の横にならんで映画館の入っているビルへと足を進めた。
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