アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第4話 手術前日
-
朝の目覚めは最悪だった。だって明日はとうとう手術の日だ。場所が頭だから手術が失敗したら後遺症が残るかもしれないって担当の先生に言われたのもあるし、我慢出来ない痛みだったらどうしようと不安でいっぱいになったから。
その日も一日中幽霊さんのことを考えて過ごした。僕の頭は幽霊さんのことでいっぱいだった。幽霊さんのことを考えていたら手術ことを考えるのも減っているのに気がついた。やっぱり僕はあの幽霊さんのことが好きなんだ。あの幽霊意外の男の子には全く興味が沸かないけれど。僕は男の子が好きなわけではなくあの幽霊だから好きなのかもしれない。
そしてまた夜の十時になった。ガラガラと扉の開く音がして幽霊さんが入ってくる。
幽霊さんから返事はないだろいけど、いいや。僕が話したいこと伝えたいことを言おう。そう思って幽霊さんに話しかけることにした。
「あの、幽霊さん。僕明日頭の手術なんだ。小児がんが頭に出来ちゃったんだ。それで手術することになって入院してるんだよ。明日からしばらく術後はナースステーションの隣にある部屋に移動になるんだ」
幽霊の少年は無表情で僕を見つめる。
「そういえばここに入院してる子に聞いたんだけど、この病棟に出る幽霊ってもうすぐ死ぬ人だけが見えるんだって……僕、幽霊さんが見えているし手術が失敗して死ぬのかもしれないね」
幽霊の少年はぎょっとした顔をした。そして、何かを言いかけたのだけどやはり昨日と同じで喉が痛くて何も話せないようだった。幽霊さんは話すことはあきらめたようだ。パジャマのポケットから二つのリングと通した銀色に輝く鎖を取り出した。そしてその鎖から小さい方のリングを一つ取り出すとぼくに手渡した。幽霊のはずなのにそのリングは暖かだった。
「えっ。これくれるの?」
ぼくは驚いて幽霊さんにそう尋ねた。すると幽霊さんは小さく頷いた。いつもは無表情なのに少し笑っているような……。
「幽霊さんありがとう。これお守りにするね。手術も頑張るよ。もし駄目だったら幽霊さんが迎えに来て」
ぼくに幽霊さんが見えるってことはもうすぐ死んじゃうのかもしれない。だけどこの幽霊さんと一緒だったら怖くはないかも。
幽霊さんは結局一言も喋ることはなくしばらくぼくの部屋で過ごしたあと部屋から出て行ってしまった。
* * *
翌日ぼくは手術を受けた。そして三日間はナースステーション近くの|ICU《集中治療室》で過ごしまた元の部屋に戻ってきたのだけれどあれ以来幽霊さんはぼくの部屋に来ることはなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 5