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嗚呼狂い始めた人生
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「それじゃあ、ご馳走様。美味しかったよ」
真夜中の日付が変わる頃に。二人は帰っていった。酒に飲まれ、気持ち悪そうな如月を支え歩く奥村。いつもは我儘で女王さまな彼が、どれほど如月を大切にして居るかどうかがわかる。
「気をつけて」
「泊まってけばいいのに」
そんな奥村の背中に手を振るホーレット。胸は未だにチクリといたんでいた。まるで針で刺されているような。まるで心が爆発するような。
「ホーレット、はいろう。風邪ひく」
名前を呼ぶ声に力を込めると驚いたようにかこっちを向く。そしてまた変わらぬ笑顔で笑うから思わず腰を落として唇にキスをした。手をまさぐり、どこになにがあるか確かめるように。どこが気持ちいいのか確かめるように。
「ンっ…やめ、」
キスすらも拒み、身体をよじるホーレット。やめなくては、と思いながらも身体は熱く火照って止まることができなかった。頬を撫でる風が心地よい。ホーレットは目尻に涙を貯めている。
「だ…だめだよ、天国に行けなくなる…神が、赦さない」
強い瞳を開いて俺の肩を押すホーレット。急に気分が落ちて行く気がする。火照った体に、冷たい風が染み渡る。
「…ごめん。」
そう言えば、涙も拭かずにホーレットが微笑んだ。満足気に、清らかに、何処かでみたような。そんな、笑顔で。
「大丈夫。神は赦してくれるよ。罪をあらためるんだ。」
「嗚呼、ホーレット。君は神かい?」
「まさか!人間だよ、触れてくれればわかる。」
「嗚呼、俺のことも愛してくれる?」
「勿論だよ。可愛いデニス」
「やっと名前を呼んでくれた」
「いま君は生まれ変わったからね」
差し出された手の甲にキスをおとして。その微笑みが、聖母のそれと同じだということに気がついた。
そして知らなかった。ホーレットと俺の歯車がこの日を境に狂い始めることを。
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