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和也が僕の兄となったのは三年前のことだった。
「よろしく。理央。俺の名は和也」
そのとき僕は中学三年生。兄は高校三年生だった。僕の父は昭和初期から三代続いた電気メーカー光和電気の社長で、母は僕が小学校三年生のときに亡くなっている。
和也の母、つまり僕にとっての継母は、前夫とは離婚していた。
離婚の原因は継母の不倫だ。
そう、継母はかつて父の企業が所有するビルの受付嬢をしていた。
僕の母と出会う前からそういう仲だったらしい。二人が結婚すれば問題なかったんだろうけど。
もちろん、そうなれば僕は生まれていなかった。
結婚に踏み切れなかったのは経済的、社会的地位の違いというやつだろうか。今どき身分違いなんて馬鹿げてるけど。
かたや、僕の母は取引先企業の社長令嬢だったから、縁談を断りづらい相手だったってことは簡単に想像がつく。
じゃあ、父にしてみれば母が死んで、継母にとっては不貞がばれてよかったってわけ。
もう、僕は子どもじゃなかった。だから使用人の噂話を拾って、和也と顔を合わせる前から、和也のことを知っていたんだ。
僕の母から夫を奪った女の息子だってことを。
だから僕は和也母子が嫌いだった。
だから僕は和也を見下してた。
「これ欲しい。あれも、それからあれも」
海外にも拠点を持つ大企業の社長の一人息子として育った僕は不自由とか我慢という言葉を知らなかった。
母は僕を溺愛していた。父が昔の女を捨てきれず密かに関係を続けていることへの当てつけと、みじめさを紛らわせるペットが欲しかっただけかもしれないけど。
「ああ、仕方ないな」
だから父にも、母と僕に対するやましさがあったんだろう。
中学三年生になるまで僕には兄弟なんていなかった。兄弟とはライバル。
両親や物を取り合い、評価を競うもっとも身近な相手。
とつぜん現れた和也は僕にとっては異物でしかなかった。
生まれたときから僕には五代目の社長の椅子が用意されていたのだから。
「和也、それ新しい洋服? いいなあ。僕にちょうだい」
和也に新しいものが与えらえれるたび、ねだって奪った。
あるいは、それよりも高いものを父に求めた。
和也の母は、父の会社の元従業員で、元不倫相手。
父は、僕や母をだまして不貞行為を続けていたクズだ。
だから、慣れない環境、豪邸、僕という弟と馴染むために、周囲の顔色を伺ってばかりの和也で憂さ晴らしをしたかった。
「いいよ。俺はいらない。理央にあげる」
だけど幾ら無理を言ってもあっさり要求を呑む和也の態度に僕のイライラは募っていった。
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