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「やっちゃった……」
「粘膜同士は触れ合ってないよ?」
「いやさすがに……へりくつ……うっ……」
「待って!泣かないでミナト、ごめん俺が悪かった、本当にごめんね、あーごめん。ごめんなさい。謝らなきゃいけないのにミナトが可愛すぎて抱きしめたくなっちゃうのもごめん」
アオイの体温がきもちくて、安心して、余計に涙が出てくる。
「うぅ〜〜…!」
「俺とするの嫌だった?ごめんね、あまりにも可愛くって我慢きかなかった」
「ちがッ、アオイが嫌とか、わるいとかじゃない、俺、いつも決まり事とかそーいうの、守ってないと安心できなくて、守ってもらわないのも嫌で、」
「うん」
「でも誰かと付き合うとさ、そーいうとこが面倒らしくていつも喧嘩になる。俺はちゃんといろんなこと決めときたいけど、それが束縛みたいに感じるらしくて」
「そっか、ミナトは真面目な子なんだね」
「ちがう、ただの小心者なんだよ。だから俺、今回は自分が変わろうって、相手の基準に100%合わせようって、頑張ってみた、」
「うん」
「けど結局、こうやって浮気しちゃうし、さいてーだ俺、」
「そんなことない」
「でも」
「そんなことないよ、ミナト」
アオイが真っ直ぐ俺の顔を見る。
「ねえ、浮気の線引きってそんなに大事かな」
「え?」
「異性と飲みに行かないとか、泊まりに行かないとか、そういうのシンプルでいいけどさ、ミナトは彼氏が女の子たちと旅行にいってどう思ったの?」
「……悲しかった」
「女の子と関わったことが?」
「それもあるけど……俺が嫌って言うの分かってて行ったこと」
「そーだよね、それなんだよ」
ミナトは俺を抱きしめたままベッドに横たわり、うでに俺を乗せて涙を拭ってくれた。それなのに、アオイの目が優しすぎてまた次から次へと涙が止まらない。
「浮気かそうじゃないかなんて、問題じゃないんだよ。ミナトが嫌じゃないか、大事なのはそこでしょう?」
「俺が嫌じゃないか……?」
「そうだよ、なんでそんな簡単なことわからないんだろうね」
そうか、俺がずっとモヤモヤしてたワケがやっと分かった。俺は俺の気持ちを分かろうとしてほしかったんだ。何がよくて何が悪いかなんてそんな線引きじゃなくて、俺がどう思うのか、それを一番に考えてほしかった。
「ミナト、また泣いてる?」
「ごめ、アオイの腕濡らした」
「それはいーけどさ。俺はミナトのそういう感情が表に出やすいところが可愛いと思うよ。大学のベンチで見かけたときも、すごいニコニコしててさ、ミナト」
「いつの話だよそれ」
「文化祭の頃かな。キーホルダー拾ったことなかった?ベンチで」
「え?あー。植え込みのところで?」
「そうそう。そのときミナト、目立ちやすいところに置いて言ったんだよ、持ち主見つかるといーな、って」
「うっわ、一人で痛いやつじゃんうっわ」
「そんなことないよ、この子いい子だなって、それからずっと気になってた」
「う……ありがと」
「真っ赤だね、可愛い」
アオイは俺の頬に手を添えた。
「ねえミナト、好きだよ」
「え、」
「俺と付き合ってほしい、です」
さっきと打って変わって、あまりにも緊張した顔で俺を見つめるから、それが伝染したかのように心臓がどくりどくりと脈打つのがわかった。
「でも俺、彼氏が……それにアオイのとこ客と繋がるの厳しいんだよな?」
「……ミナト。俺はミナトの気持ちが聞きたいんだよ。ルールじゃなくて、線引きじゃなくて」
もし俺のことを受け入れてくれるなら、キスしてほしい。
そう言ってアオイは目を閉じる。
「俺の気持ちは、」
彼氏がいるとか、客とボーイだとか、正しいとか間違ってるとか。全部無視していいのかな。アオイとは出会ったばっかりだし、こんなふわふわな状態で返事をしていいのかな。
そんなことが頭をよぎったけれど。
気づけばその薄い唇に、吸い寄せられるように近づいていく俺がいた。
おわり。
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