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職場に着くと、先に出たはずの先輩の姿がなかった。
「なぁ、ちゅんちゅん。先輩は?」
「へ?望月さんですか?まだだと思いますけど…。」
「マジ?」
何でだ?
他にも何人かに聞いてみるが、誰も先輩の姿は見ていなかった。
結構早く出てたと思うんだけどな…。
心配になりながら営業部の前で待ち構えていると、始業時間間際に先輩は出勤してきた。
「先輩、どこ行ってたんですか?」
「別にいいだろ、どこでも。」
やっぱり冷たい。
それは俺が悪いからいいとして、なんか顔色悪い。
それに目の周り、赤い。気のせい…?
「顔色悪いです。何かありました?」
「今の俺、城崎に酷いこと言っちゃそうなんだよ。…頼むから話しかけないでくれ。」
先輩は辛そうな顔でそう言った。
何でそんなに悲しそうな顔するんですか?
「いいですよ、酷いこと言っても。話しかけられない方がツラいから。」
今すぐ抱きしめたい気持ちを抑えて、見えないところで手を握る。
握った手はすぐに振り解かれてしまった。
「ごめん…。明日まで待って…。ちゃんと気持ちの整理つけるから…。」
「分かりました…。明日ちゃんと話しましょうね?」
「うん。ごめん。」
何で先輩が謝るんだよ。
先輩は何も悪くないのに。
そのあとも先輩の表情はなかなか晴れなかった。
俺以外で先輩の顔色に気付いたのは、気に食わないが蛇目さんだった。
蛇目さんと話している先輩は、少し顔色が穏やかで、何だか少し楽しそうだった。
悔しいけど、今の俺は先輩をそんな顔にさせてあげられないんだろうな…。
今日帰ったら先輩を抱きしめていいだろうか?
那瑠に誓約書書かせて、先輩にそれ見せて、もう二度と会わないよって、そう言ったら信じてもらえるだろうか?
俺には先輩しかいないと、そう伝えたい。
「城崎さーん、ここなんすけど…」
「何だよ、お前かよ。」
「お前ってなんすか!城崎さん、俺の先輩でしょ!教えてください!」
「今教える気分じゃないから、自分で考えて。」
「冷たい!!わかりました。柳津さんに聞きます!」
先輩とのこと真剣に考えてる時にちゅんちゅんに水をさされ、冷たい返事をしてしまった。
ちゅんちゅんはプンスカしながら柳津さんのところへ行き、教えを乞いていた。
ああ、もう。
早く今日が穏便に終わって、明日になってほしい。
先輩とちゃんと話して、仲直りして、そんでまた先輩の笑顔が見たい。
今日一日全く仕事に身が入らず、俺はダラダラとパソコンを開いて就業時刻を終えた。
仕事は月曜日にちゃんと挽回しよう。
荷物をまとめて、那瑠との待ち合わせ場所に向かった。
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