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ピンポーン……
インターホンの音に目を覚ます。
「先…輩……?」
ヨロヨロと玄関に向かい、扉を開ける。
「お待たせ。」
先輩…、先輩だ…。
「先輩っ…!」
「うわっ?!あっつ!!」
「先輩、ごめん…。ごめんね…。」
「何?ちょ、待って…」
「先輩、好き。愛してる。」
「待ってってば…!」
目の前にある人影を抱きしめる。
ヤバい。先輩だ。
先輩に会えた。
「先輩……」
『……城崎、風邪?大丈夫?』
「大丈夫。それより、先輩が欲しい…。」
『俺も。城崎が欲しい…。キスして…?』
「うん。先輩、好きだよ。大好き…。」
先輩が俺に向かって微笑みかける。
可愛い。
嬉しい。
夢?じゃないよな…?
「先輩、クラクラする…。」
『馬鹿だなぁ。看病してやるから、もう少し寝とけ。キスもセックスも、後で満足するまでさせてやるから。』
「うん。愛してるよ、先輩。」
腕の中で幸せそうに笑う先輩にそう伝えると、先輩の顔がどろっと溶けて、那瑠の顔に変わった。
『ふふ。僕も♡』
「…………!!」
ばっと目を覚ます。
部屋には誰もいなくて、俺はぐっしょりと汗をかいていた。
最悪な夢見た……。
途中まで幸せな夢だったのに。
先輩の気配はなくて、静かな空気に包まれる。
時間は……19時……。
……19時?!
スマホを見ると、那瑠からメッセージが入っていた。
『誓約書、書いておいたよ。机の上、置いてるから。今度こそバイバイ。会いたくなったらいつでも連絡してね♡』
机の上…?
ズキズキ痛む頭を抑えながら、ダイニングに向かう。
テーブルには那瑠のサインと捺印の入った誓約書、それと果物やゼリーが入った袋が置かれていた。
なんで、こんなところに…。
あいつ、中に入ったのか?
………思い出せない。
俺が寝てる間に?鍵かけ忘れたっけ…。
いや、さすがに熱に侵されてても、俺のことだから玄関先で書かせていると思う。
これで那瑠に連絡する理由も、会う理由もなくなった。
先輩にちゃんと向き合うための条件が揃った。
あとは風邪治して出勤するだけだ。
透さんに連絡すると、もう東京に戻ってきているらしかった。
お願いすると、迎えにきてくれて、クリニックで解熱鎮痛剤を点滴投与してくれて、二日後にはなんとか出勤できるほどには回復した。
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