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「ねぇ、透さん…。」
「ん?」
先輩の症状のこと、透さんなら分かるかな…。
医者って言っても専門が違うから、分からないかもしれないけど…。
「先輩がね、俺と話したりすると、過呼吸になるんです…。治療法とか、分かりますか?」
「過呼吸?発作ってことか?」
「はい…」
「寝不足とか過労とかそういう原因もあるけど、まぁ大抵はストレスとか心の問題だろうな。」
「……ですよね。」
「おまえ見て発作が起こるなら、おまえが原因だろ。」
「そんなストレートに……。はぁ…。」
分かっていたことだけど、いざ医者に言われると余計にグサっとくる。
俺のせいで先輩が苦しんでいるのは確かで、じゃあ先輩の言う通り、距離を置くのがいいのか…?
でも恋愛において、距離置いて成功した事例なんて、ほとんど聞いたことがないんだけど。
「俺は関わらない方がいいんですかね…。」
「まぁ、少なくとも今は接触控えた方がいいだろうな。向こうの精神衛生上。」
「…………」
「過呼吸のトリガーになるっておまえ、一体何したの。」
「…………昔のセフレとキスしてるとこ見られました。」
「はぁ?最低だな。」
「違うんですよ…。」
したくてしたわけじゃない。
でも、隙を見せたのは俺だから、悪いのは俺だ。
「透ちゃん、あんまり夏くんを責めないで?あれは私も悪いのよ…。」
「意味がわかんねーんだけど。」
「那瑠ちゃんよ。透ちゃんも知ってるでしょう?」
「あー、あの夏月に付き纏ってた…」
透さんは何となく思い出したらしい。
昔透さんと飲んでる時も、何回も俺たちの輪に入ろうとしてきたからな……。
「何で今更?」
「夏くんがここにあんまり来なくなってから、ずーっと探してたらしいのよ。他のゲイバーとかも行ってたみたい。で、最近夏くんがここで昔に体の関係があった子と接触しちゃったから、それで情報が回っちゃったみたいでね…」
「ふーん。つまりセフレをしっかり切れなかった夏月が悪くねぇか?」
「もぉ!透ちゃん!」
透さんの言う通りだ。
言う通りなんだけど…、この人も圭さんと付き合う前は来るもの拒まず、去るもの追わず…って感じだったはずなんだけど。
「透さんはどうやって切ったんですか?」
「俺はまず連絡先交換しないし、全員一夜限りだったからな。」
「しつこい奴もいたでしょ?」
「あー…。」
「どうやって諦めさせたんですか?」
「号泣するほど罵って、その後優しくてセックスの上手い男当てがったら全員ころっと乗り換えたよ。」
「うわぁ…。」
透さんは恋人以外には容赦ない。
けど、ちゃんと代わりの人まで用意するあたり、優しいのか酷いのか分からないな……。
「まぁ結局のところ、元セフレ、それもストーカーレベルに夏月のこと気に入ってた奴に隙を見せた夏月が悪いってことだろ。」
「………返す言葉もございません。」
完全に正論を突かれてしまい、俺は何も返せなかった。
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