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昼休みが終わり、午後の業務が始まる。
俺は明後日からの出張で使うプレゼン資料を見ながら悩んでいた。
インパクトを伝えるならA案、分かりやすさを重視したB案。
前出張に行った感触的に、大阪にはインパクト重視の方がいいか…?
一人で考えていても無駄だと思い、先輩に相談してみることにした。
「先輩、ちょっといいですか?」
「うわっ!え…、あ、どうした?」
先輩は露骨に動揺していた。
まだいきなり話しかけるのはダメなのか?
と思いつつ、これは仕事だから…と自分を正当化する。
「ここなんですけどね、プレゼンの資料、どっちにするか悩んでて…。」
資料を2枚先輩の前に並べた。
先輩は資料を手に取り、じーっと見比べていた。
「あー…、確かに悩むな。」
「うーん…。」
「うわぁっ?!」
先輩と同じ視線に立って見てみようとすると、無意識に先輩の真隣に顔を並べていた。
驚いて椅子ごとひっくり返りそうになった先輩を支える。
びっくりした。まさかこんなに驚かれると思わなかった。
「ごめんなさい…。近すぎましたか…?」
「わ、悪い…。」
「いや、今のは俺が…。」
謝ろうとすると、先輩の手がわずかに震えていることに気づいた。
先輩はすぐに、俺から手が見えないように隠した。
「こ、こっちの方がインパクトあって、いいんじゃないか…?」
「俺もどっちかと言うとそっちがいいかなって思ってました。ありがとうございます。」
俺は礼を言って資料を回収し、デスクに戻る。
怖がらせた。
あんなに先輩のペースに合わせるって誓ったのに…。
「ごめん…。」
「何がですか?」
先輩が急に謝るから、俺はとぼけた。
先輩だって、好きで怖がってるわけじゃない。
そんなこと分かってる。
先輩も察して、それ以上何も言わなかった。
「………ううん。それより、出張頑張れよ。」
「先輩も。ちゃんとご飯食べてくださいね。」
「いっぱいもらったから大丈夫。ありがと。」
先輩は俺が今朝渡した手料理の詰まった紙袋を見せてくる。
嬉しい。食べてくれるんだ。
「明日も何か作ってきます。何が食べたいですか?」
「いいよ。明後日から出張なんだから、しっかり休めよ。」
「俺、先輩のために何かしてる方が幸せなんです。だから、何が欲しいですか?」
「ハンバーグ…とか…?」
先輩は少し照れて、悩んだ後そう言った。
先輩、本当ハンバーグ好きだよな。
「ぷっ…(笑)言うと思った。」
「は、はぁっ?!じゃあ聞くなよ!」
「先輩の口から聞きたかったんです。じゃあ明日、腕によりをかけて作ってきますね。」
「………楽しみにしてる。」
小声で言った言葉も俺は聞き逃さなかった。
嬉しい。超嬉しい。
先輩とこうして普通に話せていることも、先輩が俺の料理を楽しみにしてくれていることも、照れた顔を見せてくれたことも、全てが嬉しくて幸せだった。
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