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翌日、俺は先輩のリクエスト通りにハンバーグを作って持っていった。
今日は明日からの出張のために、ちゅんちゅんと作戦会議が多かった。
先輩は来週からの出張のために、蛇目さんとの絡みが増えていてムカつく…。
何度か会話中に入って邪魔しようと試みたけど、真剣に仕事の話をしてたからさすがにやめた。
「先輩、まだ帰らないんですか?」
「あぁ。まだ仕事残ってて…。」
先輩は出張の業務を優先しすぎたのか、少しだけ仕事を残していたらしい。
パソコンを開いて業務を再開したのを見て、俺もデスクに着く。
「俺も残ります。」
「何言ってんだよ。城崎は明日から出張だし、もう帰りな。」
「この辺の資料捌きますね。」
「おい……。ったく……。」
先輩は俺に何言っても聞かないことを悟ったのか、無言で業務を再開した。
先輩の仕事を手伝うのは好きだ。
というか、先輩のために何かをすることが好き。
感謝されたいわけじゃなくて、先輩と関わりを一つでも多く増やしたいだけ。
付き合ってても、付き合ってなくてもそれは変わらない。
1時間ほど残業し、先輩もあらかた与えられた仕事は捌けたようだ。
帰宅準備をして、一緒にエレベーターに乗ってロビーへ降りる。
タイムカードを切って、会社を出た。
「じゃあ、少しの間会えませんけど…。」
「うん。頑張れよ。」
先輩のホテルは会社から近い。
だから駅へ向かう俺とはここでお別れだ。
寂しいな…。
三日間、加えて休日を挟むから五日間、先輩とは会えない。
俺は立ち止まって、先輩に尋ねる。
「先輩、電話してもいいですか?」
「あー……」
先輩は返事を迷っている様子だった。
ゆっくり話そうって前に言ってたのは、多分俺たちのこれからのこと。
だから、それを電話で聞くつもりはない。
「電話って言っても、前に言ってた話じゃなくて、世間話っていうか…」
「…………」
「先輩?」
「……………」
「先輩っ!」
「へっ…?!あ、何…?」
「話聞いてました?」
「ごめん…。ちょっと考え事してた…。」
先輩は心ここに在らずといった様子で、俺の声が耳に入っていなかったらしい。
俺は電話したい理由を伝えた。
結局は、俺が先輩の声を聞いて安心したいだけなんだよな。
先輩が電話を許可してくれて、俺はほっとした。
断られたらどうしようとか、結構考えたし。
「……格好良い。」
「え…?」
先輩が俺を見つめて、唐突にそう言った。
え?今格好良いって言った…?
聞き間違い……?
と思ったけど、先輩は顔を真っ赤にして、あたふたし始めた。
「………っ!な、なんでもない!!じゃあ出張頑張って!おやすみ!!」
「あ、先輩っ!!」
先輩は脱兎の如く逃げ出した。
何あれ……、可愛すぎない……?
今すぐ追いかけて抱きしめたい気持ちをグッと堪え、俺は家へと戻り、明日に備えて眠りについた。
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