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とうとう6月8日。
先輩は今日から蛇目さんと出張に行ってしまう…。
俺は東京駅に向かいたい気持ちを抑えて、何とか会社に来た。
「城崎……、顔やばいけど。」
「言わないでください……。」
多分俺の顔は誰が見てもわかるくらい不機嫌。
柳津さんは俺を見て苦笑している。
「前みたいに失敗しまくって迷惑かけんなよ?」
「するかもしれませんね。先輩いないし。」
「はぁ…。また綾人に城崎が使いもんにならなかったってチクるぞ?」
「また?!またってなんですか!前言ったんですか?!」
「言ったよ。お前マジで仕事できなかったもん。」
酷い……。
先輩に俺のダメなとこバラされたなんて……。
「柳津さんなんて嫌いです…。」
「おいおい…。それが何度も協力してやった先輩に言う言葉か?」
「先輩、なんて言ってましたか…?」
「調子悪いだけなんじゃない?って。お前本当、綾人の前ではデキる男って感じだもんな。」
「できますからね。」
「調子取り戻したみたいでよかった。」
よかった…。
幻滅されてたらどうしようかと…。
つーか、先輩と蛇目さんのことが気になりすぎて、仕事に全く身が入らない。
「城崎、働け。」
「無理…。気になる……。」
「メッセージ送れば?」
「返事くると思いますか…?」
「まぁ、余裕あれば?」
そこは嘘でも、くると思うって言ってほしかった。
この人本当正直だよな。
あー……、ムカつく。
せめて先輩の出張相手が蛇目さんじゃなくて柳津さんだったらな…。
「先輩、調子はどうですか……、と。」
「結局送るんだな。」
「当たり前でしょ。まぁ正直、先輩のことだから仕事の面は全く心配してないんですけどね…。はぁ。蛇目さんに手出されてないといいんですけど。」
「さすがに出さねえだろ。上司だぞ?」
「俺という前例をお忘れですか?」
「…………」
俺だって出したよ。
上司とか部下とか関係ない。
先輩のこと好きだったんだもん。可愛いんだもん。
二人きりとか……、手の一つや二つ出すだろ。
「あーーーー!!心配!無理!!」
「いや、マジで仕事してくれ。」
「無理っ!!!」
今すぐ飛行機で福岡まで行ってやろうかな。
先輩のことを想像すればするほど、背後から蛇目さんの魔の手が伸びてくる。
「俺も定期的に様子聞くからさ。とりあえず集中してくんね?つーか、今だいぶ関係良くなってきてんだろ?」
「そうですけど……。」
「話せるようになったなら、すげー進歩じゃん。」
「…………足りないんです。」
「我儘だなぁ。」
「彼氏ですからね……。」
柳津さんは苦笑して、俺に珈琲を淹れて仕事へ戻ってしまった。
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