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「何か食べれますか?ゼリーとかもダメそう?」
体調が悪くても、せめて何か胃に入れてほしい。
背中を摩ってそう聞くと、先輩は青白い顔をして呟いた。
「焼き鳥…」
胸がキュゥっと切なくなった。
きっと無理して食べようとしてくれてるんだと。
こんなにも気分が悪そうで、現に嘔吐までしてるのに。
「無理して食べなくていいですよ。」
「でもせっかく作ってくれたのに…」
先輩は優しすぎる。
こんなの、いつだって作ってあげられる。
自分の体調を何よりも優先してほしいのに、この人はいつも人のことばかり…。
「いつでも作ってあげます。今日は食べやすいものだけ。ね?」
「ごめんな…。」
「謝らないで?体調悪いのは仕方ないですよ。元気な時にまた一緒に食べましょうよ。」
説得するようにそう伝えると、先輩は申し訳なさそうに頷いた。
どうにかして笑わせてあげたいと、職場のあいつを思い出す。
「仕方ないから、今日の残りは職場の鳥にあげるかぁ。」
「……ふふっ(笑)鳥って、ちゅんちゅん?」
「正解です。よかった、先輩笑ってくれて。」
しんどそうだけど、少しだけでも笑顔が見れてホッとした。
「ゼリーなら食べられる?」
「……多分。」
「よかった。前に風邪引いた時の、まだ残ってたんです。みかんがいい?ぶどうがいい?」
「みかん…」
「はい。無理だったら残していいですからね。」
「ありがと。」
先輩はちまちまとゼリーを食べた。
焼き鳥どうすっかな…。
この様子で、明日焼き鳥食べれるまで元気になるとはあまり思えないし…。
さっき言った通り、ちゅんちゅんや柳津さんにお裾分けするか。
「先輩、お風呂入ってきてくださいね。」
「城崎は…?俺、あとでもいいよ。」
「焼き鳥焼いてタッパに詰めるから。時間あるし、お先にどうぞ。」
「わかった。ありがとう。」
先輩が浴室に向かったのを見て、はぁ…とため息を吐く。
原因がわからない。
家に帰ってから…?
突然気分が悪くなったのか…?
先輩が上がってくる頃に合わせて珈琲を淹れ、ダイニングで待っていると、先輩は髪をタオルで乾かしながらリビングに来た。
珈琲を促すと、先輩は俺の向かい側に座った。
そっと手に触れると、先輩はビクンッと体を震わせて、息を止めた。
「先輩……」
「だ、大丈夫…!触っていいから…」
「ううん…。無理してるでしょ、先輩。」
声も震えてる。
無理させたいわけじゃない。
だけど、本当は泣きそうになってる先輩を抱きしめたい。
「今日は俺、ソファで寝ますね。」
「え…」
「先輩のこと心配だけど、体に負担かけたくない。」
「……わかった。」
「おやすみなさい、先輩。」
今日の先輩は、また不安定な頃に戻ってる。
だから、明日ゆっくり話を聞こう。
そう思ってソファで横になったけど、心配でなかなか眠れなかった。
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