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(天は二物を与えずって言うけど、アレ絶対ウソだよな。)
数時間後。牧は体育館にいた。始業式が進んでいるのだ。牧もクラスの列に、きちんと並んでいる。全校生徒が見つめる先には、体育館のステージがあり、今はちょうど中央に生徒会長が佇み、二学期の挨拶していた。
(絶対天に優遇されている奴いると思う。)
牧が睨みつけるように眺めている、現在進行形で挨拶している生徒会長もその例外の一人だ。
白井鱗。ウロコと書いてリンと呼ぶらしい。高校二年生の生徒会長は、やや小柄で痩身だ。タックルしたら骨折しかねないと周囲に思わせる華奢で脆弱そうな上に、透けるように白い肌を持っている。ぱっちりとした円らな瞳は、薄い茶色に彩られ、ぽってりとした赤い肉感ある唇が、清楚な青年に年齢にそぐわない色香を漂わせていた。制服である黒い学ランの第一ボタンまでかっちりと留めている。そのストイックさが、人々をあらぬ方向の妄想に掻き立てるのか。
「…ということで、二学期も気を引き締めて、学校生活を楽しみましょう。」
最後ににこっと愛想よく微笑んでから、生徒会長は優雅に一礼し、その場を去っていく。
次の校長の話に興味がわかないのか。前列の女子がひそひそ話を始める。
「…ねぇ、さっきの見た??白井先輩、本当に格好いい!!」
「え~。でもぉ、私はやっぱり、クロダ先輩のが好きだったな~。」
ふっと、牧は眉を顰める。
(…誰だっけ、クロダって。)
が、すぐに相手の女子が解説してくれる。
「クロダ先輩って、あの前生徒会長の??ちょっと~、ミヨったら男を見る目なさすぎ~。」
(…黒田前生徒会長か。)
言われて、牧も即座に思い出した。四月から六月半ばまで、二年の黒田直という先輩が生徒会長をしていた。黒田は一年の時に当選し、今年度も立候補する者がおらず、また黒田に続投の意志があるとして、生徒会長をしていた。が、一身上の都合で生徒会長をやめ、再び異例の選挙が行われ、白井がその座についた。
黒田については、牧もよく知らない。ワイルドな顔立ちをした、白井に負けないくらいのモデル体型にベクトルの異なるイケメンだったが、二か月で生徒会長の座を降りたのだ。一時期は、黒田の一身上の都合について、噂が流れた。実は白井が黒幕で黒田を引きずりおろしたのだとか、家族の体調が悪くてだとか、家が貧乏だからかけもちのバイトを増やすために、とか。牧が“お前ら、ドラマの見過ぎ”と言いたくなるような内容でいっぱいだったが。
(…どうでもいい。)
はぁ、と短く息をついて、牧は目を眇める。
…下駄箱で拾ったバラは、今、教室にある牧のロッカーに入っている。鍵は自分が持っているんだから、誰も取り出せない。
(あのバラがある限り、俺は大丈夫。)
牧は、うっとりと微笑んだ。
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