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牧が体育館から校舎に通じる通路を戻っている、矢先だった。
「一年三組、牧斗真君…だね??」
声と共に肩を叩かれて、振り返ってみると、そこにいたのはあの“例外”、生徒会長の白井だった。
「…そう、ですけど。」
高校二年の先輩、それも生徒会長が自分に何の用だ。牧は亀の如く首を竦める。間近で見ても短所一つない白井の美貌に嫉妬が加速し、内心の警戒度はMAXまで昇り詰める。
そんな後輩を見て、白井は相手の肩に置いていた白百合の花弁の如くほっそりとした手を外すと、微苦笑してみせた。
「ごめんごめん、怖がらせる気はないんだ。リラックスして。」
白井の屈託ない笑みに、牧が絆されかけた、直後。
「…君、朝に下駄箱でバラを一輪、拾ったよね??」
(…ッ!!)
牧は一瞬、全身を極限まで強張らせた。何故って、あの早朝の下駄箱には、絶対に誰もいなかったからだ。早朝だったし、見かけられたはずがない。
「ひ…っ、拾ってない!!」
口角から派手に唾を飛ばして、牧は反論する。突如怒鳴り声をあげたのと、相手が華のある生徒会長だからか。あっという間に観衆が集まって来る。
「あ…。すまない、急に言われて驚かせちゃったよな。僕は…。」
「何だよ、お前!!ば、バラを拾って何が悪い!!アレは俺の下駄箱に飾られていたんだ。誰かの悪趣味な悪戯だ!!」
数秒。白井から、返答がなかった。見てみれば、相手は微かに眉根を寄せて困惑した表情を浮かべている。
「…君の下駄箱に飾られていた??」
≪そんなはずは、ない。≫
牧は、白井の気持ちが手に取るようにわかった。
「何だよ!!人を嘘つき呼ばわりする気か、てめぇッ!!」
頭に血が上った牧が生徒会長の胸倉を掴もうとした、矢先。
牧の動きを呼んだかの如く、生徒会長の上半身が傾いだ。
「え。」
これに驚いたのは牧だった。結果、相手の襟を掴もうと繰り出した手は虚しく宙を掻き、そのまま前傾姿勢になった牧は、バランスを崩してその場にすっ転んだ。突如一人で転倒した牧を、観衆はおもしろおかしそうにジロジロと無遠慮に眺めた。
「…っと、すまなかった。君には、悪いことを聞いちゃったみたいだな。じゃあ、僕はこれで…。」
何故か攻撃を避けた癖にバツが悪そうな生徒会長は、早口にそう捲し立てると声をかける間もなくその場を後にした…。
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