アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4
-
白井はバラについて言及してきたが、それ以上は何もしてこなかったようだ。バラは下校時まで白井のロッカーにきちんと鎮座していたし、誰かがロッカーを力尽くで開けようとした形跡もなかった。
ロッカーから取り出したバラを手でくるくる回しながら、牧は家路につく。普段の放課後なら友達とダラダラ喋ったり、コンビニやゲーセンなんかに顔を出すが、今日は別だ。このバラは、自分が持って帰るのだ。
牧は柄にもなく鼻歌を口ずさみながら、この時間帯はいつも人気のない駅裏の駐輪場横を歩きながら、手の中のバラを飽きずに眺める。すると、不意に視界が暗転した。突然のことに驚いていると、そのまま体当たりを食らい、硬いアスファルトの上に横たわる。少しして、理解する。自分は、背後から袋のようなものを被せられ、視界を奪われた挙句、当て身を食らって、路上に転がされたのだ、と。
地べたを這いつくばっているだろう頭の遥か遠く、上方から、低くざらついた声がした。
「牧クンさぁ…。白井に掴みかかろうとしたデショ??」
声はすぐさま近づいて、耳元に温く湿った息を吹きかけてきた。
「アイツはオレのお気に入りだからさァ~…。きったねぇ手でべたべた指紋つけんの、やめてくれる??」
鼓動が早鐘を打つ。首筋がドクドクいって気持ちが悪い。はぁはぁ、と肩で忙しない息を繰り返す。真っ黒に塗り潰された視界の隅で、じんわりと生暖かい涙が滲んでいく。
「…次やったら、ブッ殺す。」
…一つだけ、理解できることがある。
この男は、白井を邪険に扱われて尋常じゃなく怒っている。
「助けてッ!!誰か助けてッ!!俺、殺されるッ!!殺され…っんぐ!!」
ハンカチのような冷たくて分厚い布切れが、牧の口元を覆っていく。恐怖が倍になる。全身が強張る。もう駄目かもしれない、と思った瞬間、ふっと意識が遠のいた。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 8