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オレンジ色に染まりきった空は、やがて濃い紺へとその色を変えていく。濃紺はやがて限りなく闇に近い色となり、光を孕んで白み始め、闇から藍に、藍から燃えるような目が覚めるような太陽と共に夜が終わりを告げた。
一夜明け、少し時が経ち、午前十時半頃。一人の細身の男子生徒が、賑やかな教室の窓際にいた。大きく開放された窓に背を向け、両腕を窓枠に置き、両肘だけが外に出ている状態だ。
室内は、男女様々なクラスメートの声や机に触れる音や教科書の紙が擦れる音、捲れる音。たくさんの音でごった返している。細身の男子生徒…白井は、そんな日常風景を明るい表情で緩々と眺めていた。白井は近くの机に置いていた自身の愛飲している牛乳の紙パックを手にし、中身に刺したストローをぢゅう、とちょっぴり吸い上げた。それから白井は、飲みかけの紙パックを窓枠に置く。
すると、白井にたたたっと駆け寄ってくる男子生徒がいる。クラスメートだった。短い栗色の髪を風に靡かせ、男子生徒は白井に声をかけてきた。
「白井、次の授業、音楽室だろ。行こうぜ。」
「ああ。…羽柴、サンキュな。」
白井が小さく頷き返すと、羽柴と呼ばれた生徒は満足したようにへへっと小さく笑う。
「なぁ、白井。後でその牛乳、ちょっと頂戴。」
白井は一瞬紙パックに視線を遣り、ああ、と声を上げた。
「別にいいけど。」
「よっしゃあ!!」
楽しげにガッツポーズした羽柴だったが、室内の誰かに名を呼ばれ、また教室の中心へと引き返していく…。
白井が何気なく、紙パックに再び手を伸ばした…矢先だった。
白井の手が紙パックの上部に、窓の外…ベランダからにゅっと突如伸びて来た手が容器の側面を掴んだ。
白井が振り返ると…そこには学ランの上着を肩に引っかけ、制服を華麗に着崩す黒田の姿があった。
白井と黒田…二人の視線が、濃密に合わさる。黒田は真正面から、現生徒会長に何かを問いかけるかの如く。白井は刹那、くしゃりと双眸を泣きそうに歪めてから、縋るように元生徒会長を見つめた。白井の瞳に宿る光の粒子が、ゆらりと燻る。
相手を頭からかじりついて平らげてしまいそうなほど、熱烈な黒田の視線を受け、現生徒会長は衝撃に目を見開く。
「…っ。」
白井がその圧倒的王者の睨みに怯むと、まるでその瞬間を狙っていたかの如く牛乳を掻っ攫われた。白井は、慌ててベランダ側に向き直る。
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