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「……………彩ちゃん、彩ちゃん起きな」
「彩…しっかり」
落ち着いた声と、必死に肩を揺さぶる手が僕を起こす。
う、う、と唸っても、聞こえているのかわからなかった。
肩をつかむ細い指に、ぎゅっと力がこめられる。
少し痛くて顔をしかめた。
誰、誰なの。あの女の人なの。
それともご主人さまなの。
僕を苦しめるために遣わされた、知らない人なの。
怖い。
嫌……嫌だ、ご主人さまに会いたい。
優しいご主人さまとお話がしたい。
また草の上でお昼寝をして、日がくれるまでずっと一緒にいたい。
頭を撫でてほしい、ぎゅっとしてほしい。
あの綺麗な顔で、笑って。
「………ごしゅじ、さま………」
つう、と頬を冷たいものが伝った。
近くではっと息を飲む音がする。
僕の肩をつかんだ誰かの指から、力が抜けるのを感じる。
僕は流れる涙をそのままに、微かに首をよじった。
微かに息を吐きながら、震えるまぶたをゆっくりとあげる。
ピンク色の目玉が四つ、僕の目に飛び込んできた。
二人の目はまたたく。
近い方の目がほっとしたように細められた。
「彩!よかった…目を覚ました」
もう一人はすっと体を起こして、ため息をついた。
「随分うなされていたようだけど…大丈夫?」
「…………ぁ……」
声が出ない。
大丈夫ですって言いたかった。
だけど喉がカラカラに乾き切って、声を出すどころか唾を飲み込んでも喉が痛んだ。
目の前にあった目が心配気に揺れる。
「……彩?声、出ない?」
「………ぁ………やっ…」
大丈夫です、声は出ます。
僕は喋れます。……殴らないで。
「……ゃ…あ………や……」
掠れた声では相手を不快にさせるだけ。
怖くてまたすぐに目が濡れて、ぽろぽろと涙をこぼして、乾き切らない頬を何度も滴が伝う。
腕で目を覆った。
夢の続きに見えて仕方がなかった。
僕はこの人たちのことを知っている。
この人たちは僕に優しくしてくれた人。
昔のご主人さまみたいに、優しく僕に触れてくれた人。
心配なんて、いらないのに。
「……………ほら、水」
突然声が降ってきて、僕は驚いてそっちを見た。
顔を守るようにかざしていた手を少し外す。
「…あ………」
呆れたようなピンク色の目はこっちを見つめながら、伸ばした手で、水が入ったコップが差し出していた。
もう一人の人が僕の体を起こして座らせる。
ぐらり、と倒れそうになったので、その人はそのまま僕を支えてくれた。
腰に手を回される。
再び差し出された水はおとなしく飲み干した。
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