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プロローグ
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「なぁ、お前さ」
「は、はい!!」
俺は水瀬葵(みなせあおい)。
研修医だ。
晴れて、難関である医師国家資格を取得し、今は色んな課を回っては指導医の指導の元、勉強中の身である。
そんな中、俺がずっと前から希望していた『小児科』への研修が始まり、俺は意気揚々と小児科病棟へ乗り込んだのだった。
小児科での指導医は、超イケメン、ハイスペックの男だった。
患者や看護師からの信頼は厚く、その医師を悪く言う人なんて見たことがない……そんな神のような存在なのだ。
それなのに、それなのに……。
なぜか俺にだけ、まるで雪女やドラキュラかと思う位冷たい対応だった。
俺はいつの間にか蛙になり、蛇に睨まれ続ける、そんな毎日。
夢にまで見た小児科病棟での研修は、折れそうな心を何とか奮い立たせては、また折れそうになり……の繰り返しだった。
そして、研修最終日。
一応お世話にはなったので、お礼の挨拶へと向かう。
嫌な奴であったけど、指導自体はどの医師より丁寧だったし、分かりやすかった。
何より、医師としては本当に尊敬できる部分がたくさんある。
だからこそ、最後まで実習を終わらせることができたのだろうけど……。
「今日までお世話になりました!」
そう深々と頭を下げ、お礼を言おうとした瞬間、冒頭の言葉が天から降り注いできた。
もう勘弁して欲しい……俺は、本当にこの人が苦手なんだ。
有り難い神のお言葉ならば謹んで頂戴いたしますが、できるだけ手短にお願いします。
俺は、恐る恐る顔を上げる。
もう怖くて、この場から逃げ出したいくらいだった。
「お前さ……」
「は、はい!!」
怒られる、俺は咄嗟に目をギュッと瞑り、全身に力を込める。
怖い……めちゃくちゃ怖い!!
「研修終わったらでいいから、俺のとこに嫁に来い」
「は?」
今の俺は、きっと恐ろしく間抜け面をしていることだろう。
だって、目の前の男が何を言っているのか、意味がわからないのだ。
100%怒られると思っていた俺は、予想外過ぎる言葉に呆気に取られ、一気に全身の力が抜けて行った。
少し気を抜くだけで、その場に倒れそうになってしまう。
「だーかーらー、俺の嫁になれって言ってんの」
「え?は?でも、お、俺、男ですよ?」
「はぁ?今日まで俺がお前の事を、女だと思って見てたと思ってんのか?」
「い、いえ、そうじゃないですけど……」
もはや動揺すら隠せない俺を見て、その人がクスクス笑う。初めて見る笑顔に、頬が火照って行くのを感じた。
そんな俺の頭を、優しく撫でてくれる。
「俺からのプロポーズ、ありがたく受け取れよ」
「…………ぁ、はぁ…………」
もはや林檎のように顔を赤くし、顔を上げる事さえ出来ない俺が余程可笑しいのだろう。
「やっぱりお前、可愛いわ。幸せにしてやるよ」
ふわりと微笑んだ後、額に触れるだけのキスをくれた。
そうこれが、俺と成宮千歳なるみやちとせの物語のプロローグ。
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