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【番外編】僕と貴方の願い事⑥
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「何をそんなに必死にお祈りしてたんだ?」
元来た道を戻りながら、成宮先生が不思議そうに首を傾げる。
「あ、あぁ……そうですね……」
途中まで言いかけた俺は、口をつぐんだ。
これで『千歳さんとずっと一緒にいたいってお祈りしました』なんて言おうもんなら、この男はきっと有頂天へと一気に昇りつめてしまうことだろう。
やっぱり葵は、俺の事が大好きなんだな?って。
なんだか、それが凄く悔しかった。これじゃあまるで、自分ばかりが成宮先生を好きみたいじゃないか。
「秘密ですよ、秘密!」
「ふーん。別にいいけど
成宮先生が少しだけ面白くなさそうな顔をしたから、俺ははにかんで、その場を凌いだ。
「千歳さんは何をお願いしたんですか?」
「俺?」
「はい。千歳さんがどんなお願いをするのか、めちゃくちゃ興味があります」
この完璧すぎる男は、神に一体何を願うのだろうか。
地位も名誉も、既にこの男は手に入れていると言っても過言ではない。
なら、名声か……いや、そんなことは興味がなさそうだ。
じゃあ、永遠の命とかかな。
俺が興味津々と言った顔で成宮先生の顔を覗き込めば、少しだけ照れくさそうに笑う。その表情は、俺も初めて見るものだった。
その笑顔を見た瞬間、俺の胸がキュンと締め付けられる。
「葵のお願い事が叶いますようにって」
「え?」
「あんまり一生懸命祈ってる葵が可愛かったから、その願いが叶えばいいな……って思っただけ」
「千歳さん……」
「俺は、生憎だけど、神に縋る程困ってないんでね」
そう不敵に笑う姿は、いつもの成宮千歳だった。
「ありがとうございます。成宮先生」
俺はポツリ呟いた。
どうしよう……心が、ココアを飲んだ時みたいに温かい。
「きっと、この願いは神様が叶えてくれと思うんです」
「そっか、なら良かったじゃん」
「はい!」
俺は、成宮先生の腕に飛びついた。
普段は素直になれないけど、俺はこの人が大好きだ。
帰りに、綿菓子を成宮先生に買って貰った俺は、鼻歌を歌いながら家路につく。
人目がない暗がりで、そっとキスをして、手を繋いだ。
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