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貴方色に染められて⑨
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「寒っ!」
最寄り駅を出れば、あまりの寒さにびっくりしてしまった。あんなに昼間は日差しが差し込んで暖かかったのに。厚手のパーカーを羽織ってきて良かったって、心底思う。
帰ったらすぐにお風呂に入ろう。あ……すぐそこのコンビニで、先生の好きなおでんを買って帰ろうかな……ちょだけコンビニを覗いてみたけど、俺は先を急ぐことにした。
だって、1秒でも早く先生に会いたかったから。
女の子は確かにフワフワしてて、可愛らしい。
でも俺は、成宮先生のゴツゴツした指に触れられるのが好きだし、逞しい腕に抱き締められるのも好きだ。
成宮先生は女の子みたいに華奢じゃないし、可愛げなんかない。でも、何となく俺の顔色を伺って頭を撫でてくれるし、甘い甘いキスもくれる。
女の子みたいに抱かれることにも慣れたし、多分俺は、今更誰かを抱くことなんてできないだろう。そう……俺は、成宮先生の色にすっかり染まってしまったんだ。
でも、それでいい。
ううん、それがいい。
俺は急いで走り出した。早く、早く成宮先生に会いたくて仕方ない。
息を切らして走って走って、マンションに辿り着いた時、俺はエントランスの階段に蹲っている黒い物影を見つけた。
「誰だろう」
少しだけ恐怖を感じながら目を凝らせば……。
「千歳さん……」
俺の声に弾かれたように、その人物は顔を上げた。
「もしかして、ずっとそこで待ってて……」
拗ねたような顔で俺を見上げているくせに、何も言ってはこない。俺はそっと成宮先生に近付いて、その体を抱き締めた。
そんな成宮先生の体は氷みたいに冷えきっていて、少しだけ震えている。その冷たい頬を両手で包んで、優しく口付けた。
「千歳さん、ずっとずっと俺を待っててくれたんですか?」
「あ?」
俺の腕の中にいる成宮先生の体が、ピクンと反応する。天ノ弱が牙を向いた瞬間だった。
「俺は別にお前なんか待ってねぇよ。ただ、夜風が気持ちいいからここにいただけ」
「そうですか……俺はてっきり、美優と出掛けた事が心配で待っててくれたものかと……」
「はぁ?そんな訳ねぇだろ?あんなブスに、俺がヤキモチ妬く訳……ねぇよ……」
最後の方は小声になって、良く聞き取れなかった。それでも甘えたいのか、クスンと鼻を鳴らしながら、俺の首筋に顔を埋めてくる。
「ヤキモチなんか妬かねぇ。だって、葵は俺の物なんだろう?」
少しだけ不安そうな顔をしながら俺を見上げてくる成宮先生。あのいつも自信満々な人が、こんな怯えた顔をするんだって驚いてしまった。
こんな取り柄も何もない俺が、あなたをこんなにも揺さぶる事ができるなんて……ごめんなさい。俺、凄く嬉しいです。
「そうです。俺はあなたの物です」
「当たり前だろ」
「はい。あなたのお気に召すままに……」
ニコリと笑って見せれば、いつもの成宮千歳がほくそ笑む。
「わかってんじゃん」
そう、これでいい。あなたはこうでなくちゃいけない。
「寒い……」
甘えたような声を出して、俺をギュッと抱き締めてくれる。あ、やっぱり寒かったんだ……って思わず笑ってしまった。
「葵であったまりてぇ」
「いいですよ。俺であったまってください」
「何?誘ってんの?」
「さぁ?どうかな……」
「へぇ、言うじゃん」
その不敵な笑みにクラクラしてしまう。珍しく俺からキスをすれば、その柔らかくて甘い感触に心がポカポカと温かかくなる。
俺、馬鹿だから良くわかんないけど、メチャクチャ幸せなのかもしれない……。そのまま、飽きるまでキスを交わした。
「おでん食いてぇな……」
「あ、やっぱり帰りに買って来れば良かったですね?今からコンビニ行きますか?」
「うん、行く」
「ふふっ。じゃあ行きましょう」
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